【6月21日 AFP】6か国協議の米首席代表、クリストファー・ヒル(Christopher Hill)国務次官補による突然の平壌訪問を受け、安倍晋三首相は21日、これを歓迎する声明を発表した。

 安倍首相は記者団に対し、「対話をするのは当然のことだ。対話なしには問題は解決しない。対話と圧力の姿勢の中で、今回の訪朝となった」とヒル次官補の訪朝を歓迎する意向を示した。

 また、拉致問題が未解決であることを理由に、6か国協議の合意事項である北朝鮮へのエネルギー支援を拒否していることについては、「拉致問題における日本の立場は、米国も承知している」と説明した。

 米国高官の訪朝は、5年ぶりとなる。

■塩崎官房長官、北の初期段階履行に懐疑的

 一方、塩崎恭久官房長官は、北朝鮮が核廃棄に向けたプロセスを誠実に履行するのか疑わしいとするコメントを発表した。

 塩崎官房長官は記者会見で、「次期6か国協議の日程を協議すべきタイミング」と訪朝に理解を示しながらも、「まず、北朝鮮側が合意の第2段階を履行する意志があるのか、確認する必要がある」と釘をさした。

 2月の6か国協議では、北朝鮮は初期段階措置として寧辺(ニョンビョン、Yongbyon)の核施設を停止・封鎖するとし、第2段階では核関連施設を恒久的に無能力化するとしている。

 塩崎官房長官は、「北朝鮮の核問題解決に向けて、米国は日本との連携も保ちながら、あらゆる手段をつくしている」と米国への理解を示した。
「最も重要なことは、(ヒル次官補の訪朝が)どのような結果をもたらすかということだ」

 日米の対北朝鮮強硬派らは、前年の北朝鮮によるミサイル発射実験などを指摘し、2月の6か国協議合意は北朝鮮を利するだけだとして、批判的な見方を示してきた。合意事項は、北朝鮮が核施設を無能力化する見返りとして、参加国は北朝鮮にエネルギー支援などを行うとしている。

■岡崎元駐タイ大使「米は北朝鮮資金問題で過ちを犯した」

 安倍首相の外交顧問を務める岡崎久彦元駐タイ大使は、ヒル次官補の訪朝に当惑を隠さない。

 AFPとのインタビューで岡崎氏は「個人的には、米国の対北朝鮮政策に、大変混乱している」と語る。

 岡崎氏は、2月の6か国協議合意は、北朝鮮側の条件を核開発プログラムの「放棄」ではなく「凍結」としたことで、米国は北朝鮮への影響力を失ってしまったとみる。

 さらに同氏は、「米国は、北朝鮮の凍結資金問題で最大の過ちを犯した」と語る。

 「6か国協議再開を焦った米国は、北朝鮮側に大幅に譲歩してしまった。しかし、北朝鮮が順守すべき条件は寧辺(ニョンビョン、Yongbyon)の核施設の『停止』だけであり、北朝鮮が完全な『非核化』を行うとは到底考えられない。凍結資金を北朝鮮に返還した代償として、米国側に何の利益があるのか。私には理解できない」(c)AFP/Hiroshi Hiyama