【6月10日 AFP】一部の国家公務員に、天下り先を見つけられない可能性が出てきた。政府は、今後退職する国家公務員が自らが監督・指導してきた業界の企業などへ厚遇で転職する、いわゆる「天下り」の問題にメスを入れる姿勢を強めている。

 7日、衆議院は「公務員制度改革関連法案」を賛成多数で可決した。この法案成立により安倍晋三内閣は、従来の官庁による公務員の天下り先のあっせんを廃止し、新たに「官民人材交流センター(新人材バンク)」が設置される。

 この法案が成立すれば、公共事業などにおける談合や不正入札を招きやすい体制の抑制につながると一部の専門家はみている。

 米コロンビア大学(Columbia University)のジェラルド・カーティス(Gerald Curtis)教授は、「安倍内閣がこれまで発表したことを本当に実行するなら、天下りを大幅に減らすことができるだろう」と述べ、「多くの民間企業はこれまで、監督官庁との敵対を避けるため天下りを断ることができなかった」と指摘する。

 だが一方で、官民人材交流センターの設置後も、企業が監督官庁との軋轢(あつれき)を避けるため、天下り行為が水面下で行われ続ける可能性も指摘されている。

 同志社大学大学院ビジネス研究科の浜矩子教授は、この問題に対する取り組みには監視機能が必要で、政府自体もそれを認識しているが、取り組みそのものが本当に有意義な変化をもたらすかは別問題だとする。

 参院選を7月に控え内閣の支持率低下に頭を抱える安倍首相にとって、天下り問題への取り組みは、有権者の見方を変化させるための「わかりやすい手法」だ。

 国家公務員が退職後に好待遇を得る狙いで特定の民間企業を優遇するなど、天下りのシステムが公共事業での談合と不正入札を助長しているとの批判も高い。浜教授は、「天下りは公務員の雇用システムに組み込まれたもの。談合はなくならないと考えるものは多く、意義ある論議は交わされない」と語る。

 なお、衆議院が行った調査によると、2006年4月時に政府関係機関・特殊法人に籍を置く元公務員は2万8000人。これは前年から5000人以上の増加である。このうち、多くの大型公共事業を手がける国土交通省の出身者は6400人に上る。(c)AFP/Daniel Rook