日本初レズビアン議員を目指す尾辻さんが、同性愛「結婚式」
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【6月7日 AFP】同性愛者であることを公表した元大阪府議の尾辻かな子さん(32)が3日、同性のパートナーと結婚式を挙げた。尾辻さんは、7月22日に投票が実施される参議院選挙で民主党の比例代表候補として出馬する。
結婚式は名古屋市中心部の公園で開催されたゲイ・フェスティバルの一部として行われ、約1000人が出席した。民主党の小沢一郎代表ら、同党の幹部らからも祝電が届いた。
■「性的マイノリティに対する偏見の変革」を使命に
結婚式で2人ともウェディング・ドレスを着たのも、ゲイやレズビアンに対する社会的認識を高めたいとの願いからだ。当初は結婚式のような「保守的」な催しを行うつもりはなかったと言う尾辻さんだが、今は「素直にうれしい。レズビアンとしての人生をこんなに多くの人に祝ってもらったことはない」と述べた。尾辻さんの「結婚相手」は、参院選でも事務所スタッフとして尾辻さんを支える。
ゲイタウンとして知られる東京・新宿2丁目の事務所で会見した尾辻さんは、結婚指輪を披露した後、参院選で日本初の同性愛者議員としての当選を目指すと抱負を語った。しかし、日本の政界はいまだに圧倒的な男性社会。尾辻さんの肩には、性的マイノリティに対する日本社会の偏見の変革という使命と、女性議員としての期待の双方がかかる。
日本社会では同性同士の結婚は法的に認められていないため、尾辻候補の結婚式も「正当」とはみなされない。しかし尾辻さんは、「レズビアンであることを公表した上で政治家として務めることで、同性愛者の存在を目に見えるものにしたい。もし当選した場合、わたしの使命は同性パートナーの法的保障に関する法案作りなどを推進することだ」と述べた。
■欧米に比べ遅れている「性の多様性に対する認識」
一方で、欧米などで同性間結婚や未婚カップルに、異性間結婚と同等の権利や保障、法的認知を与える「シビル・ユニオン(市民契約)法」が日本でも認められるには、「議論だけでも10年かかる」と尾辻候補は予想する。「日本社会は夫婦別姓さえも認められているとはいえない」
歴史的には日本でも同性愛を容認する風潮があったが、表立って議論されたことはほとんどない。鎌倉時代などには、同性愛関係を持つ僧侶や尼僧、武士たちもいたが、それは公然の秘密だった。最近の例では、ゲイ文化を中心とする繁華街が日本各地の大都市に存在する。
日本でもゲイやレズビアンに対するあからさまな敵意が示されることはなくなったものの、欧米諸国と比較すれば、日本人の性の多様性に対する認識はかなり遅れていると尾辻候補は指摘する。
例えば、「家族の価値」を基盤とした日本社会の構築を理想に掲げる安倍晋三首相が、同性愛者を自民党候補として公認するとは思えないと尾辻候補はいう。「あれほど巨大な政党なら、同性愛者の議員や党員がいても不思議はない。しかし、自民党が公に同性愛者候補を公認するなど想像できない」
■日本の同性愛者たちは尾辻氏の立候補に期待
一方で、日本の同性愛者たちは尾辻氏の立候補を歓迎している。
ゲイの権利向上運動をしている伊藤悟氏は、「これを機に、より多くの若い世代のゲイやレズビアンが、政治の世界を目指し始めるだろう。尾辻さんの出馬が、さきがけとなることを期待している」と語る。若い同性愛者向けのカウンセリングやワークショップを開催する伊藤氏は「日本のゲイやレズビアンの人たちの多くは、まだカミングアウトできずに苦しんでいる」と訴える。
尾辻さん自身も、23歳で自身が同性愛者である事実を受け入れられるまで、数年間にわたってジレンマや恐怖と戦ってきた。「多くの同性愛者にとって、その事実を口にできるのはゲイ・バーだけだろう。彼らも昼間は異性愛者を装って生活しているのが現実だ」。家族や異性愛者の友人に知られることを恐れて、ゲイやレズビアン同士の集まりの場でさえも、本名を使いたがらない人が多いという。しかし、尾辻さんは「自分が何者であるかを隠すことを強いられるのが、正しいと思わない」と感じている。
尾辻候補は大学卒業後、大阪の女性府議の事務所でインターンとして勤務した。そのときに、ためらいながらも自身が同性愛者であることを府議に打ち明けたところ、府議が性的マイノリティの問題を議会の議題とすることに同意してくれた。これに感激した尾辻さんは「それまでは地下のゲイバーでささやかれていただけだった言葉を、政治家たちが公然と語り始めた。そのとき、政治の世界に入ることを決意した」という。
年金記録漏れ問題などで安倍政権の支持率が低下する中、参院選は野党に有利との見方もあるが、尾辻候補が目指す初の同性愛者議員への道は、容易とはいえない。(c)AFP
結婚式は名古屋市中心部の公園で開催されたゲイ・フェスティバルの一部として行われ、約1000人が出席した。民主党の小沢一郎代表ら、同党の幹部らからも祝電が届いた。
■「性的マイノリティに対する偏見の変革」を使命に
結婚式で2人ともウェディング・ドレスを着たのも、ゲイやレズビアンに対する社会的認識を高めたいとの願いからだ。当初は結婚式のような「保守的」な催しを行うつもりはなかったと言う尾辻さんだが、今は「素直にうれしい。レズビアンとしての人生をこんなに多くの人に祝ってもらったことはない」と述べた。尾辻さんの「結婚相手」は、参院選でも事務所スタッフとして尾辻さんを支える。
ゲイタウンとして知られる東京・新宿2丁目の事務所で会見した尾辻さんは、結婚指輪を披露した後、参院選で日本初の同性愛者議員としての当選を目指すと抱負を語った。しかし、日本の政界はいまだに圧倒的な男性社会。尾辻さんの肩には、性的マイノリティに対する日本社会の偏見の変革という使命と、女性議員としての期待の双方がかかる。
日本社会では同性同士の結婚は法的に認められていないため、尾辻候補の結婚式も「正当」とはみなされない。しかし尾辻さんは、「レズビアンであることを公表した上で政治家として務めることで、同性愛者の存在を目に見えるものにしたい。もし当選した場合、わたしの使命は同性パートナーの法的保障に関する法案作りなどを推進することだ」と述べた。
■欧米に比べ遅れている「性の多様性に対する認識」
一方で、欧米などで同性間結婚や未婚カップルに、異性間結婚と同等の権利や保障、法的認知を与える「シビル・ユニオン(市民契約)法」が日本でも認められるには、「議論だけでも10年かかる」と尾辻候補は予想する。「日本社会は夫婦別姓さえも認められているとはいえない」
歴史的には日本でも同性愛を容認する風潮があったが、表立って議論されたことはほとんどない。鎌倉時代などには、同性愛関係を持つ僧侶や尼僧、武士たちもいたが、それは公然の秘密だった。最近の例では、ゲイ文化を中心とする繁華街が日本各地の大都市に存在する。
日本でもゲイやレズビアンに対するあからさまな敵意が示されることはなくなったものの、欧米諸国と比較すれば、日本人の性の多様性に対する認識はかなり遅れていると尾辻候補は指摘する。
例えば、「家族の価値」を基盤とした日本社会の構築を理想に掲げる安倍晋三首相が、同性愛者を自民党候補として公認するとは思えないと尾辻候補はいう。「あれほど巨大な政党なら、同性愛者の議員や党員がいても不思議はない。しかし、自民党が公に同性愛者候補を公認するなど想像できない」
■日本の同性愛者たちは尾辻氏の立候補に期待
一方で、日本の同性愛者たちは尾辻氏の立候補を歓迎している。
ゲイの権利向上運動をしている伊藤悟氏は、「これを機に、より多くの若い世代のゲイやレズビアンが、政治の世界を目指し始めるだろう。尾辻さんの出馬が、さきがけとなることを期待している」と語る。若い同性愛者向けのカウンセリングやワークショップを開催する伊藤氏は「日本のゲイやレズビアンの人たちの多くは、まだカミングアウトできずに苦しんでいる」と訴える。
尾辻さん自身も、23歳で自身が同性愛者である事実を受け入れられるまで、数年間にわたってジレンマや恐怖と戦ってきた。「多くの同性愛者にとって、その事実を口にできるのはゲイ・バーだけだろう。彼らも昼間は異性愛者を装って生活しているのが現実だ」。家族や異性愛者の友人に知られることを恐れて、ゲイやレズビアン同士の集まりの場でさえも、本名を使いたがらない人が多いという。しかし、尾辻さんは「自分が何者であるかを隠すことを強いられるのが、正しいと思わない」と感じている。
尾辻候補は大学卒業後、大阪の女性府議の事務所でインターンとして勤務した。そのときに、ためらいながらも自身が同性愛者であることを府議に打ち明けたところ、府議が性的マイノリティの問題を議会の議題とすることに同意してくれた。これに感激した尾辻さんは「それまでは地下のゲイバーでささやかれていただけだった言葉を、政治家たちが公然と語り始めた。そのとき、政治の世界に入ることを決意した」という。
年金記録漏れ問題などで安倍政権の支持率が低下する中、参院選は野党に有利との見方もあるが、尾辻候補が目指す初の同性愛者議員への道は、容易とはいえない。(c)AFP