【カイロ/エジプト 4日 AFP】安倍晋三首相にとって初の中東歴訪は、エネルギーの安定供給を確保する効果にとどまらず、日本と中東諸国とが幅広い分野で協力する新外交を展開したと専門家らは評価する。

 しかし、今回の歴訪を具体的な成果につなげるには、中東諸国が世界第2位の経済大国に寄せる期待に日本がどのように応え、会談で約束した重要な役割を果たせるかどうかにかかっている。

 安倍首相はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール、エジプトを駆け足でめぐり、各国の指導者と会談した。

 今回の外遊は、外交政策の強化を目指す安倍首相の取り組みの一環だった。首相は昨年10月、就任後初の外遊先に中国を選択。日本外交に欠かせない訪米を、あえて今回まで保留した。

 2日、カイロ(Cairo)で中東歴訪を締めくくる記者会見を行った安倍首相は、「わたしは、わが国が中東地域に積極的に関与し、相互理解を深め、石油を超えた重層的な関係を築き、『日本・中東新時代』を築いていくことを一貫して述べてきた」と述べた。

 日本は、石油・天然ガス資源の70%を湾岸諸国に依存している。専門家らは、エネルギー協力の強化に力点を置いた安倍首相の方針は、広い支持を取り付けたとみる。

 30日に発表したクウェートとの共同声明では、日本がクウェートの石油関連プロジェクトへの技術支援を約束。これに対しクウェートは、「日本への石油の一定の安定供給を保証することを約束する」と表明した。

 日本貿易振興機構(JETROアジア経済研究所福田安志上席主任研究員は、「当然、日本の目的はエネルギー資源の安定確保にある。ただ今回、安倍首相はエネルギー安全保障を前面に打ち出すことは避け、幅広い協力関係(の構築)を強調した。これが今回の中東歴訪が成功した大きな理由だ」と指摘する。

 サウジアラビアでは、アブドラ・ビン・アブドルアジズ(Abdullah bin Abdul-Aziz)国王と会談し、両国間に「重層的な」関係を構築することで合意。アラブ首長国連邦とは、経済面の関係促進と自由貿易協定(FTA)交渉の早期妥結を目指し、閣僚級の合同経済委員会の設置を決めた。

 財団法人中東調査会塩尻宏常任理事は、「小泉(純一郎)前首相の中東歴訪から時間を置かずに(安倍首相が)訪問したことで、アラブの指導者たちは日本が中東に寄せる関心の高さを感じたようだ」と話した。

 小泉前首相は、2006年7月にイスラエルと周辺アラブ諸国を訪問し、紛争で疲弊した中東地域で日本が中立的な仲裁者を務め得るとの見方を示している。

 写真は、サウジアラビアのリヤド(Riyadh)国際空港で、出迎えたスルタン・ビン・アブドルアジズ(Sultan bin Abdul-aziz)第1副首相(皇太子、右)からアラブ風のコーヒーのもてなしを受ける安倍首相。(4月28日撮影)(c)AFP/HASSAN AMMAR