【3月16日 AFP】新ローマ法王に就任したフランシスコ1世(Francis)が、母国アルゼンチンで起きた「汚い戦争(Dirty War)」(1976~83年)当時に軍事政権により拉致・拷問された2人の司祭を守ることができなかったとの批判が出ていることに対し、バチカン(ローマ法王庁)は15日、法王は実際には人々の命を救うことに尽力したと反論した。

 中南米出身者として初めて法王に選出されたホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(Jorge Mario Bergoglio)枢機卿は、3万人が死亡または行方不明となった「汚い戦争」当時、イエズス会のアルゼンチン管区長を務めていた。

 ベルゴリオ氏には、イエズス会の司祭2人が当時の残忍な右翼軍事政権により拉致され、悪名高い拷問施設へ連行された事件で、2人の身柄拘束に関与したとの疑惑がかけられている。

 アルゼンチンの左翼系作家で「汚い戦争」に関する著作を多く執筆しているオラシオ・ベルビツキー(Horacio Verbitsky)氏は、「軍事政権による取り締まりへのベルゴリオ氏の関与」を指摘する証言者がいると主張している。ベルゴリオ氏自身はこの疑惑を否定し、司祭2人の釈放を軍事政権の指導者に懇願したと反論している。

 法王庁のフェデリコ・ロンバルディ(Federico Lombardi)広報局長は、「信頼性の高い具体的な告発はこれまでにない。アルゼンチンの司法当局は、彼を何の罪にも問うた事はない」と述べ、ベルゴリオ氏の事件への責任を問う動きは「よく知られている」ものだが、カトリック教会の信用失墜を狙った中傷的な運動に過ぎないと主張。ベルゴリオ氏は「独裁政権下で人々を救うために尽力した」と強調した。(c)AFP/ Guy Jackson