【1月26日 AFP】イスラム教への露骨な批判でイスラム過激派から「死刑宣告」を受けているソマリア出身の元オランダ下院議員、アヤーン・ヒルシ・アリ(Ayaan Hirsi Ali)氏(40)は24日、欧米の自由民主主義はイスラム過激派に「譲歩している」と批判する演説を行った。

 2004年に「死刑」を宣告されてから常に護衛をつけて生活を送っているヒルシ・アリ氏はこの日、インド・ジャイプール(Jaipur)で開催された文学フェスティバルに予告なく登場し、詰めかけた大勢の聴衆に対して「イスラム教徒とイスラム世界の怒りをかうことへの恐怖があることから、イスラム教は欧米で、他宗教には適用される厳しい吟味を大幅に免れてきた」と嘆いた。

 同氏はさらに、欧米人はイスラム過激派への恐れと「反イスラム」とみなされることへの心配から、「自信喪失に陥り、自由主義という自分たちの伝統にも背き、こうした妥協がこれらの国々の公共の場をさらに危うくしている」と続けた。 

 ヒルシ・アリ氏はソマリアのイスラム教徒の家庭に生まれたが、1992年にオランダへ政治亡命。2003年にはオランダ下院議員に当選した。

 その後、イスラム社会における女性の扱われ方を描いたテオ・ファン・ゴッホ(Theo van Gogh)監督の短編映画のために脚本を執筆した。映画は2004年に公開されたが、そのわずか2か月後にゴッホ監督が殺害され、遺体にはヒルシ・アリ氏の殺害を予告した手紙がナイフで留められていた。

 同氏は、欧州の有力政治家らにはイスラム過激派による脅威に「だんまり」を決め込んだために、人種差別主義的な右派政党の台頭を招いた責任の一端があると批判した。

 同氏は2006年、自身のオランダ国籍はく奪問題による政治危機をめぐって議員を辞職し、現在は米国で暮らしている。(c)AFP