【10月30日 AFP】インドネシアから輸入した1万5000冊あまりの聖書が、神が「アラー」と翻訳されているのを理由にマレーシア当局に押収されてしまったと、教会の指導者が29日語った。イスラム教徒が人口の60%以上を占めるマレーシアでは、イスラム教徒以外が「アラー」の語を使用することは禁止されている。

 マレーシア教会評議員会の事務局長をつとめるハーマン・シャストリ(Hermen Shastri)牧師によると、今年9月、ボルネオ島(Borneo)サラワク(Sarawak)州の空港で、神を「アラー」と訳したインドネシア語版の聖書1万冊が押収された。今年3月にも、同様に5000冊が押収されたという。

 シャストリ牧師は「聖書は信者の生活の一部。押収されなければならない理由はなにもない」と憤った。「イスラム教徒を改宗させる目的で使用するのではないか」とのイスラム教関係者らの疑念については、「聖書は教会で使用されるものだ」と一蹴した。

 カトリック教会は、同国で発行されるカトリック系新聞における「アラー」の訳の使用をめぐり、政府と約2年間法廷で争った歴史がある。そうした新聞の1つであるマレー語版ヘラルド(Herald)紙は前年、この語を使用したことで、出版ライセンスをはく奪されそうになった。

 シャストリ牧師によると、「アラー」という語はイスラム教の登場以前から使用されていた。「この語は隣国インドネシアでは問題になっていないし、中東ではキリスト教徒も使用している。ほかの意図、例えば、イスラム教徒が人口の過半数を占めていることを強く印象付けたかったのではないか」

 聖書の押収に関与したとみられるという内務省からは、この件に関するコメントは出ていない。(c)AFP