【9月2日 AFP】西アフリカのマリで、女性に対しこれまで以上の権利を認める新しい家族法が議会を通過したが、これがイスラム保守派らの激しい怒りを招き、大統領が議会に見直しを迫る事態にまで追い込まれている。

 女性の権利の強化を狙ったこの法案は、約10年前から修正を重ねながらも議題に上っていたが、前月始めに議会で過半数の賛成を得て承認された。

 その内容は、結婚は民事婚のみ認める、結婚可能年齢を18歳に引き上げる、別居状態が3年続いた場合にのみ離婚を認める、婚外子にも相続権を与える、など。同国ではこれまで、結婚年齢に関する規定はなく、しきたりにより13歳や14歳で結婚させられる少女もいた。

■5万人が抗議集会
 
 だが、同国のイスラム高等評議会は、同法を「イスラム教への冒涜(ぼうとく)」と断罪。前月22日には、首都バマコ(Bamako)のサッカースタジアムに約5万人が集まり、同法への抗議デモを行った。会場には、「西洋文明は罪悪だ!」「マリ国民を分断する法律にはノー!」といった横断幕が掲げられた。

 一方、デモを扇動したイマーム(イスラム教指導者)らは、「法案を支持する者たちはアラーを裏切った。今後は、彼らとその家族に対するいかなる宗教儀式も行わない」という旨の声明を発表した。  

 一連の抗議を受けてアマドゥ・トゥマニ・トゥーレ(Amadou Toumani Toure)大統領は、同法を発効させるための署名を取りやめ、議会に差し戻した。

 社会学者のママドゥ・サマケ(Mamadou Samake)氏は、マリ国民の90%がイスラム教徒だとしたうえで、「この法案はよく見てみると、女性に特段の利益があるわけではないのだが、議論は文化や宗教の色に染まりつつある」と話している。(c)AFP/Serge Daniel