【5月12日 AFP】中東歴訪中のローマ法王ベネディクト16世(Pope Benedict XVI)は11日、エルサレム(Jerusalem)のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)記念館「ヤド・バシェム(Yad Vashem)」を訪れ、犠牲者を追悼した。

 記念館で、ドイツ出身の法王は、ユダヤ人600万人が犠牲となったナチスによるホロコーストを「恐るべき悲劇」と表し、犠牲者の苦しみが否定、過小視、忘れ去られることはないと述べ、反ユダヤ主義を非難した。その一方で、2国家共存を基本とした中東和平の推進を訴えた。

 法王は、ホロコーストを見過ごしたナチス時代のローマ法王、ピウス12世(Pius XII)の列福を支持し、ホロコーストを否定する発言をした司教らを復権させるなどしたため、イスラエルとの関係は緊張していた。

 このため、法王がホロコースト記念館を訪れて追悼の意を表すことで、イスラエルとの関係修復につなげたいとの狙いが法王庁にはある。

 しかし、「ヤド・バシェム」管理組織のYisrael Meir Lau会長は、自身もホロコーストの生存者だが、法王の演説には謝罪が込められていなかったとして、失望を表明している。

 法王は中東の「聖地」を巡る旅で、同地では少数派のキリスト教徒らを励ますとともに、和平を促進したいとしている。

 一方、パレスチナ人は、法王の来訪を、依然としてイスラエル占領下に置かれたヨルダン川西岸(West Bank)や、前年末から1月にかけてのイスラエル軍の攻撃で壊滅的な被害を受けたガザ地区(Gaza Strip)などでの民族の窮状を、世界に訴える好機となることを願っている。

 しかし、異宗教間対話の席で、パレスチナ自治政府のイスラム教裁判所のタイシール・タミミ(Taiseer al-Tamimi)師は、イスラム教徒とキリスト教徒は協力してイスラエルに対抗すべきだと法王に訴え、法王庁の怒りを買った。

 法王庁のフェデリコ・ロンバルディ(Federico Lombardi)広報局長は、「対話の意義そのものを否定するものだ」と、タミミ師の発言に対する不快感を示している。(c)AFP/Joseph Krauss