【3月2日 AFP】イエメンの裁判所は2日、9児の父親であるユダヤ人男性を射殺したイスラム教徒の男について、精神鑑定の結果、精神異常で責任能力なしと判断し、遺族への慰謝料2万7500ドル(約260万円)の支払いのみを命じた。遺族側は控訴し、死刑を求める構えだ。

 この事件はイエメンでは人口の少なくなったユダヤ人社会を震撼させたもので、前年12月アムラン(Amran)州ライダー(Raydah)村で、被害者となったユダヤ教徒の男性を、イスラム教徒で元空軍パイロットのアブドゥル・アジズ・ヤヒヤ・アブディ(Abdul Aziz Yahya al-Abdi)被告(39)が射殺した。被告は1月の公判で「ユダヤ人たちに、イスラム教に改宗しないと殺害すると警告したのにしなかったので殺した」と何度も供述した。
  
 検察側は死刑を求刑していたが、精神鑑定の結果、裁判所は慰謝料支払いだけを命じた。被告は5年前に自らの妻も殺害しているが、当時も精神異常と鑑定され実刑を逃れている。

 イエメンではわずか400人しかいないユダヤ人のうち、約250人がアムランに住む。2日の公判中は怒った住民などによる襲撃を恐れ、当局が裁判所周辺を封鎖した。

 イスラエル建国の1948年、イエメンには約6万人のユダヤ人がいたが、3年以内に4万8000人がイスラエルに移住。その後ユダヤ人社会は縮小を続け、90年代初頭には1000人前後まで減った。(c)AFP/Hammoud Mounassar