【12月22日 AFP】「クリスマスの空疎な商業主義」を批判するドイツのカトリック司祭が2002年に始めた、「サンタ・フリーゾーン(Santa-Free Zone、サンタ撤廃地域の意)」運動。今年は世界的な金融危機の影響もあり、サンタクロースを排除し、サンタのモデルとなった聖ニコラス(Saint Nicholas)の精神を復活させることを目指したこの運動に、多くの賛同者が集まっているという。

 カトリック慈善団体のクリストフ・ショマー(Christoph Schommer)氏は、「運動の目的は、クリスマス産業が作り上げた商業主義の申し子、サンタクロースは、聖ニコラスとほとんど無関係だということを周知することだ」と語る。
 
 聖ニコラスは、4世紀に現在のトルコに実在した司教だ。貧しい人々にこっそりプレゼントをしていた寛大さと謙虚さで知られる。貧しさゆえに父親から売春婦として売られそうになっていた3人の娘たちを助けるために、娘たちの枕元に金塊を一晩に1個ずつ、3夜にわたって密かに置いたという逸話も残されている。

 毎年12月6日、世界各地でカトリックやギリシャ正教信者たちが「聖ニコラスの日」を祝う。子どもたちは、この日の朝、前の晩に並べておいた靴の中にプレゼントのチョコレートがぎっしり詰まっている光景を目にすることになる。

 そんな聖ニコラスのお株を奪ってきたサンタクロース。赤い服、まるまると太った体格、ふわふわした白いひげというおなじみのイメージは、米コカコーラ(Coca-Cola)社の1930年代のコマーシャルが由来だといわれる。

 こうしたサンタクロースについて、サンタ・フリーゾーン運動の賛同者らは、キリスト教の慶事を退廃的かつ飽くことを知らない欲の見せ場に変質させ、クリスマスの品位を落としめたと批判。聖ニコラスこそが、クリスマスの象徴としてふさわしいと訴える。
 
 ショマー氏は、「聖ニコラスは連帯、隣人愛、共有の価値観を、身をもって示した。だが、サンタが実践してきたのは全く逆のこと。サンタは消費社会の体現者そのものだ」と話した。(c)AFP/Deborah Cole