【11月24日 AFP】マレーシアのイスラム教徒の最高会議に当たる全国ファトワ評議会(National Fatwa Council)議長は22日、ヨガはイスラムの信仰を弱めるものだとして、ヨガを禁止するファトワ(宗教令)を出した。これに対しヨガ愛好者や穏健派のイスラム団体らが、激しく反発している。

 同評議会のアブドル・シュコール・フシン(Abdul Shukor Husin)議長は、ヨガの最中にマントラを唱える行為は「(ヒンズーの)神との一体感」を意図するもので、アラーへの冒涜(ぼうとく)とみなされるためヨガを禁じると布告した。

 イスラム教徒の女性の権利擁護団体「シスターズ・オブ・イスラム(Sisters of Islam)」の幹部は、地元紙に対し「ヨガがヒンズー教への改宗を促したり、信仰心を損なったりしているとは思わない。仏教に根を持つ太極拳と同じ、エクササイズにすぎない」と反発する。団体にはヨガを教えているメンバーが複数いるが、今後もヨガのクラスを続けるという。

イスラム教徒であるヨガの教師も「ヨガは礼拝的な要素を含む必要はなく、健康に良いエクササイズだと世界中で認められている」と語った。

 議会野党リーダーのリム・キットシアン(Lim Kit Siang)議員は、多民族国家を分断しかねない保守的なイスラム国家へとマレーシアが傾倒しつつあることが、今回のファトワで示されている、と懸念を表明した。

 マレーシアはイスラム教を国教とし、人口270万人の60%以上がマレー系イスラム教徒。インドを起源とした数千年の歴史を持つヨガは最近、欧米のセレブの間で流行しているが、マレーシアの首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)でも、ストレス解消法として人気を博すようになっている。

 同評議会によるファトワは、法的な拘束力を持たず、ファトワ違反者への罰則規定もない。しかし評議会はマレーシア国内のイスラム教徒に対し、絶大な影響力を持っている。(c)AFP