【9月3日 AFP】世界中のイスラム教徒は2日までに、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」を迎えた。紛争地帯では束の間の平和への期待が高まる一方で、食糧価格の高騰が一般家庭を直撃している。

 ラマダンの1か月間、イスラム教徒は、日の出から日没まで飲食や性行為などを慎むことが求められる。日没後には食事「イフタール(iftar)」を盛大に楽しむことになるが、世界的な食糧価格の高騰により、多くの人にとってイフタールは高嶺の花になりそうだ。

 ラマダンの間は暴力を控えることも求められる。パキスタンでは、ラマダン入りにあたり、アフガニスタン国境付近でのタリバン(Taliban)掃討作戦が中止された。タリバン側も、「善意のしるし」として攻撃の中止を約束し、パキスタン兵の捕虜30人のうち6人を解放した。
 
 だがソマリアでは、反政府組織のユスフ・モハメド・シアド(Yusuf Mohamed Siad)司令官が、「アラーの敵を国から一掃するまで」ラマダン期間中であっても政府軍とエチオピア軍への攻撃を継続するどころか強化する、と明言している。

 イラクではラマダン入りした1日、最も治安が悪化している中西部アンバル(Anbar)州の治安維持権限が、駐留米軍からイラク軍へ移譲された。

 フィリピンでは、ラマダン入りに伴い、南部を拠点とする反政府勢力モロ・イスラム解放戦線(Moro Islamic Liberation FrontMILF)の掃討作戦が一部緩和されている。

 レバノンではラマダン入りの前、長く続いてきた政府および軍内部の反目が一息ついて、心休まる夏の観光シーズンを迎えていた。だが、この国でも、食糧価格の高騰でイフタールの準備に苦心する人は多い。そのため複数の慈善団体が低所得家庭に対し、ラマダンを乗り切るための食糧を配給している。 

 2007年6月からイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が実効支配しているパレスチナのガザ地区(Gaza Strip)では、市場にランタンを買いに来た4児の父親が「今年のラマダンも代わり映えはしないよ。ラマダンの気分にさせてくれるものはどこにも見あたらない」とぼやいた。イスラエル軍はガザ地区を全面封鎖しているが、生活必需品などの人道支援は続けられている。

 イスラム諸国会議機構(Organisation of the Islamic ConferenceOIC)の議長を務めるセネガルのアブドゥラエ・ワッド(Abdoulaye Wade)大統領は、「飢餓、特にアフリカの乾燥地域の住民を苦しめている飢餓がなくなるよう、祈ろう」と呼び掛けた。

 2日にラマダン入りしたイランでは、警察が、公の場での飲食を取り締まると警告している。

 トルコでは、ラマダン中に食欲を抑えるためのダイエットパッチを使うことの是非が議論されたが、宗教学者らは前月、「ダイエットパッチはイスラムの教えに反しない」との見解を示した。「ダイエットパッチは、液体や軟膏(なんこう)を皮膚に塗ることで、食欲抑制効果のある成分を体内に摂取するものであり、断食を阻害する行為とは言えない。したがって断食には反していない」とのことだ。(c)AFP