【7月17日 AFP】(一部更新、写真追加)オーストラリアを初訪問中のローマ法王ベネディクト16世(Pope Benedict XVI)はシドニー(Sydney)で17日、現代の大衆文化や商業主義、「偶像崇拝」などを批判した。

 カトリック教会の祭典「世界青年の日(World Youth Day)」の演説で述べたもので、81歳の法王はキリストの使徒らが、当時、彼らを取り巻いていた文化の「邪悪な」部分に屈することなく、強固な意志で初代教会の設立に至った経緯を、内外から集まった10代のカトリック教徒ら15万人に訴えた。

 全世界のカトリック教徒11億人の精神的指導者であるローマ法王は、現代社会は「何かが間違っている」と発言。「今日の世界は、物欲、搾取、分裂に加え、偶像崇拝や世界が抱える問題への不統一な反応にあふれ、偽りの約束による苦しみなどで疲弊している」と、現代社会を強く批判した。

 また「個々の生活や共同体において、危険な憎悪に遭遇することもあるが、こうした憎悪は善悪の判断をむしばみ、われわれの存在や、われわれが創造された理由である使命をゆがめてしまう」と説き、病める現代の顕著な例として、アルコール依存と麻薬中毒を挙げた。

 法王は、同地に向かう航空機内から見たさまざまな光景を引き合いに出し、環境問題にも言及した。法王は機内からの眺めに心からの敬服の念を感じたと述べた上で、地球上の問題は上空から見るように俯瞰的にとらえれば分かりやすいと語った。

 また「不本意ではあるかもしれないが、われわれは、海岸の侵食、森林破壊、どん欲な消費を賄うための鉱物・海洋資源の無駄遣いなど、地球上にさまざまな傷跡が刻まれていることを認めなければならない」と述べた。

 法王は、今回のオーストラリア訪問で性的虐待問題についての演説を行う意向を示しているが、実際に行われるかどうかは依然として明らかになっていない。(c)AFP