【12月5日 AFP】米ニューヨーク(New York)で、ローマカトリック教会が小児愛癖の司祭らによる性的被害から子どもたちを守るための塗り絵を製作した。

 同教会のニューヨーク市大司教区広報担当者が4日、明らかにしたところによると、「Being Friends, Being Safe, Being Catholic」と題されたこの塗り絵は、教会の安全環境プログラムの一環として作られたもので、今年に入り市内の数百の学校に配布されたという。

 例えばある塗り絵には、ミサで侍者を務める少年に大人の男性(司祭)と密室で2人きりにならないよう注意する天使の絵が描かれている。また、性的対象となる子どもをインターネットのチャット上で狙う小児愛者への注意を促す天使の塗り絵もある。

 聖職者による性的被害者の救済ネットワーク「Survivors Network of Those Abused by Priests」のデビッド・クロヘシー(David Clohessy)氏はAFPの取材に対し、教会のこうした取り組みを歓迎する一方で、「教会上層部が外部からの圧力への対応として実施したような内容にとどまっている」と述べ、これだけでは被害を防ぎきれないとの見方を示した。

 米国で聖職者による子どもたちへの性的虐待が長らく行われていた事実は、2002年にボストン(Boston)教区の大司教が、知り合いの司祭が少年たちに性的虐待を加えていた事実を告白するまで明るみにでることはなかった。

 聖職者の性的虐待を調査している「Bishop Accountability(司祭の責任)」によると、全米4万2000人の司祭のうち約3000人がこれまでに性的虐待の疑いで弾劾されている。なかには、捜査当局の調査対象となったり有罪判決を受けた司祭もいるという。

 聖職者による数々の性的虐待事件が明るみに出てから、各カトリック団体などがこれまでに被害者に支払った賠償金は合計で約28億ドル(約3000億円)にのぼり、財政難から資産売却に走る教会も出ている。

(c)AFP