【11月22日 AFP】 ローマ法王庁生命アカデミー(Pontifical Academy for Life)委員長のエリオ・スグレシア(Elio Sgreccia)司教は21日、ヒトの皮膚からの人工多能性幹細胞の作製が成功したことについて、胚(はい)の使用に関連した「倫理的問題」とするべきではないとの見解を示した。

 スグレシア司教はキリスト教系通信社「I-Media」に対し、「現時点でわれわれはその研究を合法的とみなしており、それ以上の検証は行わない」と述べた。

 日米それぞれの研究チームは20日、ヒトの皮膚から人工多能性幹細胞を作ることに成功したと同時に発表した。

 この成功により、今後、特定患者の遺伝情報を持った幹細胞を作り出すことができるようになり、移植された細胞組織や臓器が拒絶反応を起こす危険性がなくなる。

 スグレシア司教によると、カトリック教会は技術的なプロセスについては懸念していないが、人間の尊厳が脅かされるようなことがあれば対応を考えるという。

 同司教は「この考え方により、カトリック教会はヒトのクローニングおよびヒト胚性幹細胞(ES細胞)を作製する際にヒト胚を破壊することに反対している。誰かを犠牲にして別の人の命を救うというのは、倫理的なマキャベリズムだ」と主張した。

 5000の皮膚細胞から1個の人工多能性幹細胞の作製に成功した京都大学(Kyoto University)の山中伸弥(Shinya Yamanaka)教授は前年、バチカンで同アカデミーの研究に参加したという。

 同アカデミーは1994年、生命の向上や保護、とりわけキリスト教倫理や教会の指導内容に直結するような医学的および法的研究を支援するため、前法王ヨハネ・パウロ2世(John Paul II)が設立した。(c)AFP