【8月9日 AFP】オランダの右翼政党所属の下院議員が8日、イスラム教の聖典コーラン(Koran)の国内での禁止を呼びかけた。同議員は、コーランについて読む者に殺人や強姦を促す「ファシスト的な」内容を含むと主張している。

 呼びかけを行ったのは極右政党、自由党(PVV)党首のGeert Wilders下院議員。同議員の主張は、全国紙フォルクスクラント(De Volkskrant)紙に掲載された。自由党は下院150議席のうち、9議席を占めている。

 Wilders議員は紙面上でコーランを、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の自伝『わが闘争(Mein Kampf)』と比較して「立憲国家オランダにふさわしくない」と主張。さらに「(コーランは)キリスト教徒やユダヤ教徒を圧迫、迫害、殺害し、女性を殴打、強姦し、武力でイスラム国家を樹立するようイスラム教徒に呼びかけている」などと記載した。

 オランダ法では、このような政治的攻撃に対して最大1万6750ユーロの罰金刑を課すことができる。検察当局は、Wilders氏を起訴するかどうか、検討するものとみられる。

 オランダ政府はWilders議員の主張を、国内の地域社会における住民同士の関係を損なうものと非難。考慮する価値のない議論として退けた。

 Ella Vogelaar社会統合相は「オランダ政府は、コーラン禁止の議論など行わないし、この方針は将来にわたっても変わらない」と明言。信教の自由を保障する考えを示した。

 Vogelaar社会統合相はWilders議員の主張について、「オランダ内外で憎悪や暴力を否定する多数のイスラム教徒を侮辱するものだ」と語った。

 Wilders議員は反イスラムの立場を取る人物で、殺害をほのめかす脅迫状を何通も受け取っているという。オランダの有名コラムニストで映画制作者だったTheo van Gogh氏がイスラム過激派に殺害された2004年以降は、24時間体制で身辺警護を受けながら生活している。(c)AFP/Stephanie van den Berg