「キリストに妻子」、ジェームズ・キャメロンのドキュメンタリーが波紋 - 米国
このニュースをシェア
【ニューヨーク/米国 26日 AFP】イエス・キリストの棺を検証した結果、キリストに「妻子」がいたとする米国の映画監督、ジェームズ・キャメロン(James Cameron)氏製作のドキュメンタリー番組が、3月4日の放送を前に波紋を拡げている。
番組は映画「タイタニック(Titanic)」で知られるキャメロン監督と、ドキュメンタリー映画で数々の賞をを受賞しているユダヤ系監督、シムハ・ヤコブビッチ(Simcha Jacobovici)氏が、共同で製作したもの。
発見が事実ならばキリスト教教義の要である「キリストの復活」が覆されることとなり、またベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード(The da Vinci Code)」とも類似しているなど、各方面から様々な論争を呼んでいる。
番組の放映を前に26日、記者会見に臨んだ両監督によれば、キリストの妻はマグダラのマリア(Mary Magdalene)で「ユダ(Judah)」という名の息子がいたと考えられるという。
キャメロン氏は「私は考古学者でも聖書学者でもない。しかし、ドキュメンタリー映画の制作者として、怖れずに真実を追究する責任がある」と語った。
「キリスト教への侮辱と受け取られかねないことは予想していた。しかし、我々にはそのような意図は全くない。むしろ、聖書の登場人物が実在していたことが証明され、キリスト教にとっても喜ぶべき発見なのだ」。
両監督がドキュメンタリーでとりあげた墓所は、1980年3月28日にエルサレム(Jerusalem)旧市街タルピオット(Talpiot)のアパート建設現場で発見されたもの。
ドキュメンタリーを製作したディスカバリー・コミュニケーションズ(Discovery Communications)の声明文によると、タルピオットの墓所で発見された石灰岩の棺10基は、イスラエルの学者、L.Y. Rahmaniの1994年の著書「A Catalogue of Jewish Ossuaries(ユダヤ式棺の一覧)」に記載されているものだという。
そのうちの5基に、新約聖書の主要人物5人、イエス、マリア(Mary)、マタイ(Matthew)、ヨセフ(Joseph)、マグダラのマリアに相当するとみられる名前が刻まれているという。
また、1基にはアラム文字(Aramaic)で「イエスの息子、ユダ(Judah Son of Jesus)」と読める名前が書かれているほか、アラム文字で「ヨセフの息子、イエス」と刻まれた棺が1基あるという。
ヘブライ(Hebrew)文字で「マリア」と読めるものもある。これはラテン語の「ミリアム(Miriam)」、英語の「メリー(Mary)」に相当するという。また、ヘブライ文字で刻まれた「マティア(Matia)」という名前の正式名はヘブライ語で「マタイ」だという。
唯一、ギリシャ語で刻まれた名前、「Mariamene e Mara」は、「聖人として知られたマリア」という意味だという。
カリフォルニア(California)のBade Museum館長を務める聖書考古学を専門とするPacific School of ReligionのAaron Brody客員教授は、「このような墓所はエルサレムで良くみられる典型的なものだ」と、キャメロン氏らの説に懐疑的な見方をディスカバリーに語った。
一方、以前にドキュメンタリー映画、「The Lost Tomb of Jesus(キリストの失われた墓)」を製作、監督しているヤコブビッチ氏は、今回のドキュメンタリーで、2基の棺内の遺骨に対してDNA鑑定と化学的検証を行った。
そのうちの1体は、それぞれ「ヨセフの息子、イエス」と「マグダラのマリア」と刻まれた棺内の遺骨と同一成分が含まれていることがわかった。
もう1体は、石灰岩の骨つぼの表面に付着する緑青が含まれていた。
また、遺体の解析がカナダ、オンタリオ(Ontario)のレイクヘッド大学(Lakehead University)で古DNAを研究するCarney Matheson博士によって行われ、ミトコンドリアDNA鑑定の結果によると、「イエス」と「マグダラのマリア」には、DNAの共通性が見られなかったという。
通常、同一墓所内には埋葬されるのは血縁関係にある親族か夫婦に限られることから、ヤコブビッチ氏は「イエス」と「マグダラのマリア」は夫婦関係にあり、「ユダ」はその息子である可能性が高いと推測する。
また、同氏は番組の中で、「ヨハネの福音書」の「最後の晩餐」の場面でイエスの膝で眠っていたとされる「若者」は、息子の「ユダ」ではないかとの推測を述べている。
しかし、10年あまり前に同墓所の検証を行ったイスラエルの考古学の第一人者でBar Ilan UniversityのAmos Kloner教授は、墓所は裕福なユダヤ人家族のものであるとし、イエスの家族の墓である確証はないと言い切る。
同教授はAFPとの電話インタビューで「私は学者であり、学問的見地から研究を行う。ドキュメンタリー番組製作とは何の関連もないし、宗教物語を科学的発見に転じる必要性など何もない」と語った。
また、タルピオットの墓所について、「現在も、紀元前1世紀の一般的なユダヤ人墓地だとの確信を持っている」と述べ、棺の名前と聖書の人物との一致は「単なる偶然」だとした。
「『マリア』が『マグダラのマリア』で『ユダ』がイエスの息子だなどと、誰も断言できないし、証明も不可能だ。紀元前1世紀には、マリアやユダはありふれた一般的な名前だったのだから」
写真はエルサレムで、イスラエルの遺跡管理当局(Israeli Antiquities Authority)が26日公開した「マグダラのマリア」のものとされる石灰岩製の棺。(c)AFP/HO/Israeli Antiquities Authority
番組は映画「タイタニック(Titanic)」で知られるキャメロン監督と、ドキュメンタリー映画で数々の賞をを受賞しているユダヤ系監督、シムハ・ヤコブビッチ(Simcha Jacobovici)氏が、共同で製作したもの。
発見が事実ならばキリスト教教義の要である「キリストの復活」が覆されることとなり、またベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード(The da Vinci Code)」とも類似しているなど、各方面から様々な論争を呼んでいる。
番組の放映を前に26日、記者会見に臨んだ両監督によれば、キリストの妻はマグダラのマリア(Mary Magdalene)で「ユダ(Judah)」という名の息子がいたと考えられるという。
キャメロン氏は「私は考古学者でも聖書学者でもない。しかし、ドキュメンタリー映画の制作者として、怖れずに真実を追究する責任がある」と語った。
「キリスト教への侮辱と受け取られかねないことは予想していた。しかし、我々にはそのような意図は全くない。むしろ、聖書の登場人物が実在していたことが証明され、キリスト教にとっても喜ぶべき発見なのだ」。
両監督がドキュメンタリーでとりあげた墓所は、1980年3月28日にエルサレム(Jerusalem)旧市街タルピオット(Talpiot)のアパート建設現場で発見されたもの。
ドキュメンタリーを製作したディスカバリー・コミュニケーションズ(Discovery Communications)の声明文によると、タルピオットの墓所で発見された石灰岩の棺10基は、イスラエルの学者、L.Y. Rahmaniの1994年の著書「A Catalogue of Jewish Ossuaries(ユダヤ式棺の一覧)」に記載されているものだという。
そのうちの5基に、新約聖書の主要人物5人、イエス、マリア(Mary)、マタイ(Matthew)、ヨセフ(Joseph)、マグダラのマリアに相当するとみられる名前が刻まれているという。
また、1基にはアラム文字(Aramaic)で「イエスの息子、ユダ(Judah Son of Jesus)」と読める名前が書かれているほか、アラム文字で「ヨセフの息子、イエス」と刻まれた棺が1基あるという。
ヘブライ(Hebrew)文字で「マリア」と読めるものもある。これはラテン語の「ミリアム(Miriam)」、英語の「メリー(Mary)」に相当するという。また、ヘブライ文字で刻まれた「マティア(Matia)」という名前の正式名はヘブライ語で「マタイ」だという。
唯一、ギリシャ語で刻まれた名前、「Mariamene e Mara」は、「聖人として知られたマリア」という意味だという。
カリフォルニア(California)のBade Museum館長を務める聖書考古学を専門とするPacific School of ReligionのAaron Brody客員教授は、「このような墓所はエルサレムで良くみられる典型的なものだ」と、キャメロン氏らの説に懐疑的な見方をディスカバリーに語った。
一方、以前にドキュメンタリー映画、「The Lost Tomb of Jesus(キリストの失われた墓)」を製作、監督しているヤコブビッチ氏は、今回のドキュメンタリーで、2基の棺内の遺骨に対してDNA鑑定と化学的検証を行った。
そのうちの1体は、それぞれ「ヨセフの息子、イエス」と「マグダラのマリア」と刻まれた棺内の遺骨と同一成分が含まれていることがわかった。
もう1体は、石灰岩の骨つぼの表面に付着する緑青が含まれていた。
また、遺体の解析がカナダ、オンタリオ(Ontario)のレイクヘッド大学(Lakehead University)で古DNAを研究するCarney Matheson博士によって行われ、ミトコンドリアDNA鑑定の結果によると、「イエス」と「マグダラのマリア」には、DNAの共通性が見られなかったという。
通常、同一墓所内には埋葬されるのは血縁関係にある親族か夫婦に限られることから、ヤコブビッチ氏は「イエス」と「マグダラのマリア」は夫婦関係にあり、「ユダ」はその息子である可能性が高いと推測する。
また、同氏は番組の中で、「ヨハネの福音書」の「最後の晩餐」の場面でイエスの膝で眠っていたとされる「若者」は、息子の「ユダ」ではないかとの推測を述べている。
しかし、10年あまり前に同墓所の検証を行ったイスラエルの考古学の第一人者でBar Ilan UniversityのAmos Kloner教授は、墓所は裕福なユダヤ人家族のものであるとし、イエスの家族の墓である確証はないと言い切る。
同教授はAFPとの電話インタビューで「私は学者であり、学問的見地から研究を行う。ドキュメンタリー番組製作とは何の関連もないし、宗教物語を科学的発見に転じる必要性など何もない」と語った。
また、タルピオットの墓所について、「現在も、紀元前1世紀の一般的なユダヤ人墓地だとの確信を持っている」と述べ、棺の名前と聖書の人物との一致は「単なる偶然」だとした。
「『マリア』が『マグダラのマリア』で『ユダ』がイエスの息子だなどと、誰も断言できないし、証明も不可能だ。紀元前1世紀には、マリアやユダはありふれた一般的な名前だったのだから」
写真はエルサレムで、イスラエルの遺跡管理当局(Israeli Antiquities Authority)が26日公開した「マグダラのマリア」のものとされる石灰岩製の棺。(c)AFP/HO/Israeli Antiquities Authority