インド系ミス・アメリカが示す「アメリカの理想」の進化
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【9月22日 AFP】2014年のミス・アメリカ(Miss America)コンテストでインド系米国人として史上初の優勝を果たしたニーナ・ダブルリ(Nina Davuluri)さん(24)は、直前の15日のインタビューで「親しみやすい女の子」というミス・アメリカ像を語っていた。
「ミス・アメリカというのはずっと、親しみやすい女の子のことだと思ってきた。親しみやすい女の子像は、米国の多様性が広がるとともに進化している」
同じインタビューでダブルリさんは、中国系米国人のセレブ司会者ジュリー・チェン(Julie Chen)さんが目を整形していたことについて聞かれると、批判的な言葉を巧みに避けながら「人に外見を変えてほしいとは思わない。ありのままの自分に自信を持ってほしいと思う」と語った。
米ニューヨーク(New York)州シラキュース(Syracuse)生まれのダブルリさんの両親は、インド南部アンドラプラデシュ(Andhra Pradesh)州の出身だ。ミス・アメリカ・コンテストでダブルリさんは、そのルーツを全面に打ち出し、「チョリ」と呼ばれる丈の短いブラウスを身に着け、ルビー色の衣装でボリウッド(Bollywood)風のダンスを披露した。
ミス・アメリカは女性を物のように扱う時代錯誤なコンテストだという批判がある一方で、主催者側はこのコンテストを「アメリカそのもの」だとみているというのは、米国の人種の推移とミスコンテストに関する著書をまもなく出版するカリフォルニア州立大学フレズノ校(California State University at Fresno)の歴史学者ブレーン・ロバーツ(Blain Roberts)氏だ。「インド系米国人として初の優勝者が生まれたことは、女性の美についての私たちの概念、また米国人らしさの概念をいっそう広げるものだ」
92年の歴史を持つミス・アメリカでは最初、非白人は除外されていた。ロバーツ氏によれば、米国では1950年代に人種差別に対して注意が向けられつつあったものの、ミス・アメリカではこの頃から「南部美人(Southern Belles)」と呼ばれる、かつての南部連合国(the Confederacy)出身の出場者らが優勢を保った。アフリカ系がようやくミス・アメリカに選ばれたのは83年のバネッサ・ウィリアムズ(Vanessa Williams)さんが初めてだったものの、ウィリアムズさんは後にヌード写真をめぐるスキャンダルでタイトルを返上した。
台湾系でニューヨーク州選出のグレース・メン(Grace Meng)下院議員は、今回のダブルリさんの優勝を、第2次世界大戦直後の1945年にユダヤ系として初めて栄冠に輝いたベス・マイヤーソン(Bess Myerson)さんになぞらえて称えている。
■変わる米国社会、変わる民族や美への意識
論争の的になっている問題の一つは、米国のマイノリティーたちが意識的か無意識的かを問わず、白人の美しさの概念に迎合しているのではないかという点だ。セレブ司会者のジュリー・チェンさんは、駆け出しの頃に上司から圧力をかけられ、目の整形手術を受けたと告白した。アフリカ系米国人については、縮れた頭髪を直毛に矯正した人がこれまでに大勢いる。
しかし2008年にバラク・オバマ(Barack Obama)氏が黒人初の大統領に就任し、先住民出身の州知事が2人誕生するなど、米国の状況はある意味で急速に変化した。40年までにはヒスパニック系以外の白人が少数派に転じる見込みだ。
市場調査会社ミンテル(Mintel)の最近の調査によると、アフリカ系米国人女性の4分の3近くが頭髪を自然のままにしており、縮毛矯正剤の売れ行きは08年以降26%も落ち込んでいる。
米独立系世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が10年に実施した調査によると、異人種間結婚を認めるとの意見は65歳以上で36%にとどまった一方、30歳以下ではほぼ全員が容認する姿勢を示した。「世代を追うごとに、多様化した多文化社会での生活になじんでいる」と、マサチューセッツ大学アマースト校(University of Massachusetts Amherst)の社会学者C・N・リー(C.N. Le)氏は言う。
南アジア系米国人のためのオンライン・マガジン「エアログラム(The Aerogram)」の創設者ラクシュミ・ガンジー(Lakshmi Gandhi)氏は、ダブルリさんが自分のルーツを打ち出したことに対する反響が圧倒的に好意的だったと指摘。「ミス・アメリカの決勝大会で、英語を一言も話さずボリウッドダンスを披露したのは素晴らしい」
ガンジー氏はまた、ダブルリさんの優勝をめぐる人種差別的コメントをマスメディアが取り上げることを批判した。「そうしたコメントをツイッター(Twitter)に投稿する人間に、5人や10人のフォロワーがつくことは、誰もが分かっている。そうした意見をなぜ世界に知らしめようとしているのか分からない」
これまでミス・ワールド(Miss World)では5人のインド人女性が優勝しているものの、米国で南アジア系の人々に対するイメージは「セクシー」より「オタク」が優勢だ。
ダブルリさんはSFが好きな点や、脳行動の学位取得、医学大学院への進学希望など、オタク的傾向があることを率直に認めている。「面白いのは、ダブルリさんが科学を専攻し、オタクであることについて語っている点だ。そうした経歴とミスコンテストでの優勝は互いに矛盾しないことが示されている」(c)AFP/Shaun TANDON
「ミス・アメリカというのはずっと、親しみやすい女の子のことだと思ってきた。親しみやすい女の子像は、米国の多様性が広がるとともに進化している」
同じインタビューでダブルリさんは、中国系米国人のセレブ司会者ジュリー・チェン(Julie Chen)さんが目を整形していたことについて聞かれると、批判的な言葉を巧みに避けながら「人に外見を変えてほしいとは思わない。ありのままの自分に自信を持ってほしいと思う」と語った。
米ニューヨーク(New York)州シラキュース(Syracuse)生まれのダブルリさんの両親は、インド南部アンドラプラデシュ(Andhra Pradesh)州の出身だ。ミス・アメリカ・コンテストでダブルリさんは、そのルーツを全面に打ち出し、「チョリ」と呼ばれる丈の短いブラウスを身に着け、ルビー色の衣装でボリウッド(Bollywood)風のダンスを披露した。
ミス・アメリカは女性を物のように扱う時代錯誤なコンテストだという批判がある一方で、主催者側はこのコンテストを「アメリカそのもの」だとみているというのは、米国の人種の推移とミスコンテストに関する著書をまもなく出版するカリフォルニア州立大学フレズノ校(California State University at Fresno)の歴史学者ブレーン・ロバーツ(Blain Roberts)氏だ。「インド系米国人として初の優勝者が生まれたことは、女性の美についての私たちの概念、また米国人らしさの概念をいっそう広げるものだ」
92年の歴史を持つミス・アメリカでは最初、非白人は除外されていた。ロバーツ氏によれば、米国では1950年代に人種差別に対して注意が向けられつつあったものの、ミス・アメリカではこの頃から「南部美人(Southern Belles)」と呼ばれる、かつての南部連合国(the Confederacy)出身の出場者らが優勢を保った。アフリカ系がようやくミス・アメリカに選ばれたのは83年のバネッサ・ウィリアムズ(Vanessa Williams)さんが初めてだったものの、ウィリアムズさんは後にヌード写真をめぐるスキャンダルでタイトルを返上した。
台湾系でニューヨーク州選出のグレース・メン(Grace Meng)下院議員は、今回のダブルリさんの優勝を、第2次世界大戦直後の1945年にユダヤ系として初めて栄冠に輝いたベス・マイヤーソン(Bess Myerson)さんになぞらえて称えている。
■変わる米国社会、変わる民族や美への意識
論争の的になっている問題の一つは、米国のマイノリティーたちが意識的か無意識的かを問わず、白人の美しさの概念に迎合しているのではないかという点だ。セレブ司会者のジュリー・チェンさんは、駆け出しの頃に上司から圧力をかけられ、目の整形手術を受けたと告白した。アフリカ系米国人については、縮れた頭髪を直毛に矯正した人がこれまでに大勢いる。
しかし2008年にバラク・オバマ(Barack Obama)氏が黒人初の大統領に就任し、先住民出身の州知事が2人誕生するなど、米国の状況はある意味で急速に変化した。40年までにはヒスパニック系以外の白人が少数派に転じる見込みだ。
市場調査会社ミンテル(Mintel)の最近の調査によると、アフリカ系米国人女性の4分の3近くが頭髪を自然のままにしており、縮毛矯正剤の売れ行きは08年以降26%も落ち込んでいる。
米独立系世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が10年に実施した調査によると、異人種間結婚を認めるとの意見は65歳以上で36%にとどまった一方、30歳以下ではほぼ全員が容認する姿勢を示した。「世代を追うごとに、多様化した多文化社会での生活になじんでいる」と、マサチューセッツ大学アマースト校(University of Massachusetts Amherst)の社会学者C・N・リー(C.N. Le)氏は言う。
南アジア系米国人のためのオンライン・マガジン「エアログラム(The Aerogram)」の創設者ラクシュミ・ガンジー(Lakshmi Gandhi)氏は、ダブルリさんが自分のルーツを打ち出したことに対する反響が圧倒的に好意的だったと指摘。「ミス・アメリカの決勝大会で、英語を一言も話さずボリウッドダンスを披露したのは素晴らしい」
ガンジー氏はまた、ダブルリさんの優勝をめぐる人種差別的コメントをマスメディアが取り上げることを批判した。「そうしたコメントをツイッター(Twitter)に投稿する人間に、5人や10人のフォロワーがつくことは、誰もが分かっている。そうした意見をなぜ世界に知らしめようとしているのか分からない」
これまでミス・ワールド(Miss World)では5人のインド人女性が優勝しているものの、米国で南アジア系の人々に対するイメージは「セクシー」より「オタク」が優勢だ。
ダブルリさんはSFが好きな点や、脳行動の学位取得、医学大学院への進学希望など、オタク的傾向があることを率直に認めている。「面白いのは、ダブルリさんが科学を専攻し、オタクであることについて語っている点だ。そうした経歴とミスコンテストでの優勝は互いに矛盾しないことが示されている」(c)AFP/Shaun TANDON