【8月19日 AFP】米ニューヨーク(New York)市ブルックリン(Brooklyn)地区にあるグレゴリー・クローエン(Gregory Kloehn)さん(42)の「ごみ収集箱」を改造して作った小さな家には、屋上にサンデッキがあり、外でバーベキューパ―ティーを開くこともできる──。

 カリフォルニア(California)州をベースに活躍する美術作家のクローエンさんは、新品のごみ収集箱を1000ドル(約9万8000円)で購入し、さらに数千ドルを費やして実際に住むことができるよう改造し、建具を設置した。

 AFPの取材班を室内に招き入れたクローエンさんは、「ドアや窓を閉め、路上に置いたら、皆ごみ収集箱だと思うよ」と述べ、「中で寝てるとは思いもしない。外でバーベキューをやっていても皆、通り過ぎる。家だとは考えられないみたいだね」と話した。

「新品のごみ収集箱を購入して改造を始めたんだ。開始当初は、もっと適当なものにする予定だったんだけど、『御影石のカウンタートップを入れよう』『フローリングを敷こう』と進めていくうちに、一般の住居にあるもの全部をこの小さな家に入れてしまえって思ったんだ」(クローエンさん)

 この緑色の小さな家の中には、裏がウイスキーやウオツカの並ぶミニバーとなっているダッチドアを通って入る。キッチンには、流し、ガスレンジ、冷凍庫、そして中華鍋を改造したレンジフードがある。室内にはそのほか、黒いビニール製のクッションを座面と背面にあしらった小さなソファもある。座面を持ち上げると収納スペースが現れ、その一部は水洗トイレになっている。トイレは地域の下水設備に接続可能だという。

 広くない室内だが、壁の一部は可動式となっており、自然光を取り込む窓も設置してある。クランクを回して高さを最大にすると、上部空間も十分とれる。

 外側にはシャワー設備とガスを使ったバーベキューセットが用意されている。電気は近くにある差し込み口から、「拝借」して生活するのだという。

■「小さな家運動」にも貢献

 クローエンさんのの作品は、米国での「大きいことはいいことだ」のモットーに疑問を投げかける、「小さな家運動」にも一役買っているようだ。

 米国で小さな家についてのブログ「The TINY LIFE」(http://www.thetinylife.com./)を運営しているライアン・ミッチェル(Ryan Mitchell)さんは、クローエンさんの作品を高く評価している。

 ミッチェルさんによると、米国の平均戸建床面積は241平方メートル。一方で最近注目を集めている「小さな家」の床面積は17平方メートル、大きくても37平方メートルだ。老後を考えるいわゆるベビーブーマーから、特に熱い視線を集めているようだ。

 現在、ノースカロライナ(North Calorina)州で自分のための小さな家を建設中のミッチェル氏は、AFPの電話取材で、小さな家への関心は高く、各自治体での規制が今のように厳しくなければ、もっと増えるだろうと述べた。

■その他の作品

 クローエンさんは、この家の他にも多くの作品を手掛けている。冷蔵庫のドアや廃棄された木材、ピックアップトラックのグラスファイバー製カバーといった既製品を再利用して可動式の「廃材の家」を完成させている。

 そのほか、自転車にバーベキューセットやサラダバーなど、突拍子もない組み合わせで作品を作り続けている。作品はウェブサイト(http://www.gregorykloehn.com/)で見ることができる。

 ごみ収集箱でできた家の屋上に設けられたサンデッキの上で周囲を見渡したクローエンさん。「大きい家ほど問題も大きい。いつか大きい家がゴミだらけになってしまうだけだ」と物思いにふける様子でつぶやいた。(c)AFP/Robert MACPHERSON