【7月30日 AFP】(写真追加)高層ビルに遮られて頭上に広がる夜空を見ることができない米ニューヨーク(New York)では、星空の下で、あるいは輝く摩天楼の下で、贅沢な眠りにつける画期的なサービスが話題になっている。

 ホテルが提供するこのサービスでは、アールデコ調のビルやガラス張りの現代的建物の最上階にあるテラスやバルコニーから、窓ガラスやカーテンにさえぎられることなく、心地よい風を感じながら頭上を仰ぎ見ることができる。また、大気汚染やまぶしい光、目もくらむような超高層ビルによって夜空の星が見えにくいニューヨークでも、ここでしか味わえない経験を旅行者に提供できるとホテル側は胸を張る。

 高級ホテル「AKA」グループのエラーナ・フリードマン(Elana Friedman)氏は、「当ホテルでは、一生に1度の経験としてお客様に喜んでいただけるようなこと、他では経験できないようなアイデアが浮かんだ時には、すぐに実現するよう努力しています」と語る。

 17階建ての「AKAセントラルパーク」の最上階では、クイーンサイズのベッド、ろうそくの明かりの下でのディナー、ロマンチックな夜を演出する軽食、そして眠らない街ニューヨークの星空を観測できる大型望遠鏡を備えた、5つ星並みの「屋外ベッドルーム」を提供しており、ジャズを奏でるギターの生演奏もある。

 この企画は、旅行業界で「魅惑のキャンプ(glamorous camping)」、略して「グランピング(glamping)」と呼ばれており、ブラジル、オーストラリア、アラブ首長国連邦からの旅行者や地元ニューヨークの人々にも人気があるという。

「これからはもう普通のキャンプに行きたくないわ」と話す宿泊客の女性もいるほどだ。

■NYのコンクリートジャングルにテントを張る

 自然を満喫するアウトドアを楽しみたいけれど、快適なベッドも諦めたくない――。そんな旅行者の要求から生まれた豪華キャンプがニューヨークに定着したのは、例年になく厳しい冬に見舞われた2011年以後のことだ。

 マンハッタン(Manhattan)の高級住宅街アッパーイーストサイド(Upper East Side)で、豪華な屋外スイートルームを提供しているアフィニアガーデンズ(Affinia Gardens)のマーケティング部長、スサーナ・ラモス(Susana Ramos)氏は、「当ホテルでキャビンフィーバー(僻地や狭い空間で生じる情緒不安定)を感じた宿泊客が、アウトドアを経験したいと強く要望されたのです」と話す。

 しかし、宿泊客らは野性的な経験を望んだわけではなく、「温もりのある環境で、夏らしいアウトドアを体験したいと希望した」という。

 同ホテルの緑豊かなテラスに設置したテントに宿泊する屋外スイートルームの1泊の宿泊料金は、時季によって309ドル~700ドル(約3万円~6万9000円)だという。

 この部屋に宿泊したオランダ人の男性(42)は、ろうそくの明かりに照らされた快適そうなベッドと冷えたワインのボトルを見て驚いたと話す。「ニューヨークではありえないよ。ここでは普通、部屋は閉ざされた空間だからね。外のテントで過ごせるなんて素晴らしい」

 旅行専門家のマイケル・ルオンゴ(Michael Luongo)氏によると、こうした経験ができるホテルはまだ少ないが、ニューヨークでは屋上を再利用する動きが高まりつつあるという。

 ニューヨークの星空の下で一夜を過ごすことは、旅行者にとって忘れられない思い出になるだろうとルオンゴ氏は語る。「米国と超高層ビルは切っても切り離せません。摩天楼は、建築に捧げた私たちの贈り物であり、遺産なのです」(c)AFP/Prune PERROMAT