【5月26日 AFP】鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタル(ArcelorMittal)の従業員たちが溶鉱炉の操業継続を求め、オーナーであるインドの鉄鋼王ラクシュミ・ミタル(Lakshmi Mittal)氏や警察と戦う──フランスで長期化した労働争議を題材にしたオンラインゲームが登場した。
 
 このゲームは、フランス北東部の街フロランジュ(Florange)にミタルが所有する製鉄所で、溶鉱炉の閉鎖を阻止しようとする労働者たちの闘いにヒントを得た「キル・ミタル(Kill Mittal)」。ゲーム中、ミタル氏はロボットとして登場し、プレーヤーは他の労働者たちと結束し、ドラム缶を投げつけたりして治安部隊に抵抗する。

 イントロでは「2030年、ミタルは牛耳られ、閉鎖され、世界中の鉄鋼工場からは数万人の労働者が叩き出された。守られることのない約束と度重なる工場閉鎖にうんざりした男たちにとって、すべての調停が失敗に終わったとき、残された解決法は一つしかない。それは『ミタルを殺す』ことだ」との説明が流れる。

 題名は物々しいが、製作者のアレグサンドル・グリレッタ(Alexandre Grilletta)氏は「暴力や上司を襲うことをあおろうというゲームではない。わざと漫画のスタイルを選んでいて、流血場面はない」と言う。

 ミタルの溶鉱炉閉鎖は、フランスの鉄鋼業が徐々に消滅しつつある状況を象徴している。フランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領は昨年の就任時、フロランジュの雇用維持を公約としたがコスト面で挫折し、解雇回避を条件に操業休止に同意せざるを得なかった。怒った労働組合は街の近くに「裏切り者」と書いた墓石を立てたが、オランド氏の与党・社会党所属の自治体の首長が「真の罪はミタルにある」として、この墓石を撤去する一幕もあった。

 ロボット・ミタルが打ち負かされると、これは単に一つの闘いでしかなく、すぐにミタルに代わる誰かが現れるだろうという予言が流れてゲームは終わる。このゲームは「www.killmittal.com」で入手できる。(c)AFP