【4月11日 AFP】盗みを働こうとした男を取り押さえたイタリア・フィレンツェ(Florence)近郊の集合住宅の管理人が、この男に仕事を与えると申し出た。第2次世界大戦後最悪の不況に襲われ、厳しい緊縮財政と高い失業率に苦しんでいるイタリアで、このニュースは大きく報じられた。

 管理人のパオロ・ペドロッティ(Paolo Pedrotti)さん(62)は8日、この集合住宅で銅線を盗もうとしたマルチェロ・ムッチ(Marcello Mucci)さん(54)を、刃物を使ってひるませて取り押さえ、警察に引き渡した。

 しかしその翌日、ペドロッティさんは、ムッチさんが失業中で妻が受給している月額250ユーロ(約3万2500円)の障害年金で暮らしていたことを知ったという。「妻の車を使って60ユーロ(約8000円)の物を盗みに来るなんて、どんな泥棒だい」(ペドロッティさん)

 そこでペドロッティさんは、ムッチさんに集合住宅の清掃と芝刈りの仕事を、時給8ユーロ(約1000円) で提供するという内容の公開書簡を地元紙ティレーノ(Il Tirreno)に投稿した。

 庭師の職を失っていたムッチさんは、この厚意をすぐに受けたと話している。銅線を盗もうとしたのは、これを使って器やシャンデリアを作り、各家庭を回って売るためだったと説明している。

 ペドロッティさんの手紙は「親愛なる泥棒さんへ」から始まり、「私はあなたを待っています。いずれにせよ、私の住所はご存じでしょう」と締めくくられていた。(c)AFP