【4月1日 AFP】「一人っ子政策」を実施している中国では、ある一定の条件下にて2人目の子供を持つことが一部自治体では認められているが、経済的な理由などから、あえて一人っ子を選ぶ家庭が多い──。

 北京(Beijing)から北東に位置する河北(Hebei)省承徳(Chengde)市の甲山(Jiashan)で料理店を営む42歳の女性、Lu Xuiyanさんは「子供が多いと大変。子供が少ないほうが、負担も軽くて経済的にも楽」だと語る。承徳市は「一人っ子」ではなく「二人っ子」政策を採用している地方自治体の一つだ。

■子育て「コスト」避けたい国民

 中国の一人っ子政策は30年以上前に導入された。反対派はこの政策によって人権侵害と人口の大きな不均衡が生じていると批判する。しかし承徳市の人々のように「自主的に」子供の数を抑えている姿勢を見る限り、人口抑制策はあえて必要ないようにも思える。

 中国政府は人口過剰を避けることで、急速な経済発展が促されたと主張している。しかし労働人口の縮小は経済成長を減退させる恐れがあり、またケアを必要とする高齢者人口の比率も増加することから、一部専門家らは、中国は出生数を増やすことこそを重視すべきだと主張している。同国の出生率は女性1人当たり1.5人で、人口置換水準とされる2.1人を大きく下回っている。

 しかし、米シンクタンク「ブルッキングス研究所(Brookings Institution)」が北京で運営する清華・ブルッキングス公共政策研究センター(Brookings-Tsinghua Centre for Public Policy)の王豊(Wang Feng)所長は、今すぐ一人っ子政策を廃止すれば、出生率は数年で25%増える可能性があるが、その後また数年で現在の水準に戻ってしまうだろうと指摘する。

 一人っ子政策にはすでに自治体レベルで多くの例外が存在する。少数民族の家庭や夫婦共に一人っ子の場合には免除されたり、地方部では最初に生まれた子供が女児だった場合は2人目の出産が許可されるという自治体も多く、実際に徹底されているのは中国全体の6割でしかない。しかし世論調査によると親たちは、2人以上の子供がいると居住費、教育費などが悪循環的に増えると回答している。

 出生率の低下は人々の生活が豊かになり、都市への移動が進むと生じる世界的な傾向だ。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)のカイ・ヨン(Cai Yong)教授は「都市化と経済発展と出生率低下には非常に強い相関がある。目下、経済的利益に強い関心を寄せている中国国民には、子供を持つことは非常にコストがかかることだと捉えられている。一人っ子政策の緩和など気にも留めていない」

■「一人っ子政策」廃止に向けた動きなのか?

 中国政府は先月、一人っ子政策を監督してきた国家人口・計画生育委員会(National Population and Family Planning Commission)を保健省に再編・合併、同時に人口政策の権限は経済成長の監督機関に移された。

 こうした動きの中、近い将来にも一人っ子政策を廃止できると専門家たちは主張しているが、当局は政策変更の議論をまったく受け付けていない。馬凱(Ma Kai)副首相は、保健省との合併を今月発表した声明で「改革後もわが国は現行の家族計画策を維持し、推進していく」と明言した。

 にもかかわらず専門家の間では、今回の再編は政策見直しを意図するものだとか、少なくとも一人っ子政策の実施にとって障害になる、といった慎重ながら(緩和・廃止を)期待するが聞かれる。北京大学(Peking University)の李建新(i Jianxin)教授は「無論、現行の(一人っ子)政策ができるだけ早くなくなることが望ましい。早ければ早いほど良い」と述べている。(c)AFP/Carol Huang