【3月13日 AFP】オーストラリアを旅行していた英国人男性が英雄ともてはやされ、それがきっかけで職を失ったことが12日、明らかになった。病気休暇を取得中だったことが解雇の理由だという。

 英ウェールズ(Wales)の慈善団体職員だったポール・マーシャルシー(Paul Marshallsea)さん(62)は今年1月、豪ブリスベーン(Brisbane)近くのビーチで体長約1.8メートルのサメに出くわし、そばで泳いでいた子供たちを守るためにサメを退治した。

 地元テレビ局のカメラマンがその様子を撮影していたことから、サメと闘うマーシャルシーさんの映像は世界中を駆け巡り、雇い主の子供慈善団体「Pant and Dowlais Boys' and Girls' Club」の目にも留まった。

 その後、同じ団体で働いている妻のウェンディさんと共にウェールズのマーサーティドビル(Merthyr Tydfil)にある自宅に帰ると、2人宛てに解雇通知が届いていた。実は2人とも、精神的ストレスを理由に昨年4月から病欠を取っていたのだ。

 3人の子供を持つマーシャルシーさんは地元の「ウェールズ・オンライン(WalesOnline)」に対し、「マーサーティドビルには、サメと格闘する人を雇いたいという会社などほとんどありませんよ」と話した。夫婦はストレスに対処するために休暇旅行に行くよう、医師から勧められたと主張しており、団体の対応は「不愉快だ」という。

 団体からの通知には、「最近のテレビのニュースに流れた映像によると、あなたは病気で働くことができない一方、オーストラリアに旅行するには十分、健康なようだ。サメの尾をつかみ、かまれそうになったらとっさに逃げることもできるようだ」と書かれていたという。

 マーシャルシーさんは、「あの日、あのビーチで子供を助けに行っていなかったら、私も妻も仕事を失うことはなかったでしょう」と話した。(c)AFP