【1月10日 AFP】唇をすぼめたモデルのグラビア写真や恋愛に関する際どい助言を掲載した、ミャンマー初の性教育誌「Hyno」。昨年11月の創刊以来、慎み深いミャンマー国民の間で物議をかもしていた同誌が10日、当局から発行禁止処分を受けた。

 ミャンマーでは前年8月まで、軍政下で導入された出版物の事前検閲制度が続いていた。公衆道徳に悪影響を及ぼす判断された写真や記事は警告を受け、政府見解と異なる意見の表明は抑圧されていた。

 この事前検閲制度の廃止を受けて創刊された「Hyno」だったが、若者たちを中心に「必読」ともてはやされる一方、「際どすぎる」「米男性誌プレイボーイ(Playboy)並みにわいせつだ」などの批判も集め、「手に入れたばかりの『自由』を利用している」との怒りを買っていた。

■社会を変える一石との期待、一方で販売拒否も

 発禁処分を受ける前、AFPの取材に応じたコ・ウー・スウェ(Ko Oo Swe)同誌編集長は、「魅了する」という意味の言葉を冠した「Hyno」について「性教育とエンターテインメントを合わせて提供する雑誌だ」と説明。18歳以上向けであることを示す赤いラベルが表紙に貼られている点が、批判を招く要因となっているとの見方を示すとともに、「ミャンマーでは今もセックスはタブー視されている。より開かれた社会へと変化しつつある中でも、性教育はまだ不十分だ」と訴えていた。

 実際「Hyno」の若い読者たちの間では、性感染症に対する認識の向上に貢献し、引いてはミャンマーが数十年にわたる国際的孤立から脱却する上で硬直した社会規範や道徳観を変えるのではないかと期待する声が上がっていた。

 一方、国内の一部書店では、同誌の目的は性教育より性的に興奮させることにあるとして、販売を拒否する動きが出ていた。ヤンゴン(Yangon)最大規模の書店の1つ「インワ・ブックストア(Innwa Book Store)」の店長は、女性客を中心に購入問い合わせが殺到しているにもかかわらず「無料でくれたとしても販売することはない」と話していた。

■当局は「ポルノ」扱い、健康雑誌に路線変更?

 こうした中、ミャンマー情報省は「ライフスタイル誌として非倫理的だ」と不快感を表明する書簡を暫定新聞委員会に送付していたが、10日になって「Hyno」の発禁処分を決定した。国営日刊英字紙「ニュー・ライト・オブ・ミャンマー(New Light of Myanmar)」によると、アウン・チー(Aung Kyi)情報相は「Hyno」を「ポルノに近い」と批判し、行き過ぎだと判断したという。

 だが、創刊号を発行しただけで発禁に追い込まれたコ・ウー・スウェ編集長は、当局の決定に抗議する方針だ。今後はHIV/AIDSの感染予防や売春問題、女性に対する暴力問題など、より社会的な話題を誌面に取り上げ、「新たに健康雑誌として出版許可を申請するつもりだ」と話している。(c)AFP