【12月17日 AFP】特定の遺伝子を心細胞に入れると、その細胞が心臓の拍動を調節する「ペースメーカー」の役割を果たすようになることをラットを使った実験で証明したという米医学チームの研究論文が16日、科学誌「Nature Biotechology」に掲載された。 

 現在は薬やペースメーカーに頼っている不整脈の生物学的治療に向けた成果だと研究チームは説明している。

 心臓はおよそ100億個の細胞からできているが、心臓が一定のリズムで血液を送り出すように鼓動を調節する電気信号を発する「ペースメーカー細胞」は1万にも満たない。

 米カリフォルニア(California)州ロサンゼルス(Los Angeles)シダーズシナイ(Cedars-Sinai)医療センター心臓研究所の研究チームはこのほど、あるウイルスを用いて「Tbx18」と呼ばれるヒトの遺伝子をラットに入れた。Tbx18遺伝子は、未熟な細胞をペースメーカー細胞に誘導する役割を持つ。

 その結果、害のない「トロイの木馬」によって「Tbx18」に「感染」させられたふつうの心細胞が、重要な役割を果たすペースメーカー細胞になったという。

 論文共著者のチョ・ヒチョル(Hee Cheol Cho)氏はAFPの取材に、新たに生まれ変わった細胞は自然に電気信号を発生するようになり、元来のペースメーカー細胞と区別がつかないと説明した。

 この技術は生物学的なペースメーカー治療を目指す10年におよぶ研究を基礎として開発されたもの。これまでのところモルモットやラットでの実験しか行っていないが、AFPに送った電子メールの中でチョ氏は、2~3年後にはペースメーカー植え込み術後の感染がある患者を対象に初の臨床試験が行えるのではないかと述べた。(c)AFP