【12月11日 AFP】ベールを身にまとって生涯の大半を過ごすアフガニスタンの女性だが、一部には女性の美しさの理想に近づかなければならないと感じ、首都カブール(Kabul)にある一握りの美容外科医院に列を作っている女性たちがいる。

 数年前ならば、こうした医院で女性が受ける手術の大半は、戦争や家族の暴力によって受けた傷や、酸を使った襲撃によるやけど、男性優位社会の戦乱の世に絶望した果ての自傷行為による傷の修復などだった。しかし現在、最も人気があるのは鼻の美容整形だ。しわ取りや豊胸、腹部の整形手術なども人気が高い。

「10年前は傷の修復がすべてだった」と、カブールで医院を経営するアミヌラ・ハムカル医師(53)は語る。「ときどき、ここに来る若い女性たちに何故、美容整形をしたいのか聞くのだが、彼女たちはただ単に『見た目を良くしたい、より美しくなりたいから』と答えるだけだ」

 このことは良い傾向だとハムカル医師は言う。少なくとも首都カブールでは人々が、旧支配勢力タリバン(Taliban)の暴力を乗り越えて、平和なときでなければ考えないことに目を向け始めたしるしだからだ。

「姉妹たちは鼻が大きくて高いのがずっとうらやましかった。私の鼻は小さくて平らなのに」と鼻の整形手術のために医院を訪れた18歳の少女、シャイダさんは語る。

 シャイダさんは少数民族ハザラ人の出身。ハザラ人はモンゴル系の顔つきの人が多く、瞳はアーモンド色で、鼻は他の民族よりも低い。女性警察官として働くシャイダさんは、友人や同僚たちが鼻や目の美容整形をするのを見て、自分も手術しようと決意したという。「大きな鼻になったので気分が良いし、満足です」と笑顔で語った。

■中流階級の勃興

 この医院には外科医2人がいて、医療目的や修復手術など通常の形成手術の合間を縫って、週2人ほどに美容整形を施術している。ほとんどの場合、経費を切り詰めるために局所麻酔で行っている。また、鼻を大きくするためにはシリコンは使わず、肋骨の軟骨を切り取り、整形して使っている。

 鼻を大きくする手術の料金は一般的に300ドル(約2万5000円)程度。アフガニスタンの多くの人々にとっては月給1か月分に相当する。

 だが、11年前のタリバン政権崩壊以降、大量の支援金が流入し、中流階級が出現した。この層はイランやアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)、それに欧州諸国の流行に敏感で、美容目的のためだけの整形手術にも出費を惜しまない。

■ドバイから帰国した夫に「美しくない」と非難され

 ハムカル医師は、18歳の既婚女性の例を挙げた。この女性は、ドバイに働きに出て帰国した夫に胸がたるんでいると非難され、外国で見てきた「普通」以下だから、もう別れたいと言われたという。

「彼女の夫は、ドバイのような、より開放的でリベラルな都市に行って、そこで美しく整形した女性たちを見たのだろう。帰って来て妻の姿に嫌気がさしたら、整形外科に行くことさえ許可したのだ。アフガニスタンほど保守的ではない所に行って帰ってくると、生き方や性に対する考え方が変わる人が多い」

 元軍幹部のモハマド・イブラヒムさんは、娘から鼻を小さくしたいと言われ、その方が気分が良いのならいいだろうと許可したという。「60年代、70年代の政府は多様な文化を学ぶことを奨励し、政府職員が外国に旅行することを支援さえしてくれた」とイブラヒムさんは語る。だが、1979年の旧ソ連の侵攻以来、数十年も続いた戦闘とタリバンの台頭により、そうしたものは奪われたという。

「今は比較的民主的だ。娘には自分が醜いと感じたり、疎外感を持ったりしてほしくない」とイブラヒムさんは語った。(c)AFP/Usman Sharifi