ミャンマーに「帰郷」するビルマネコたち
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【9月11日 AFP】しなやかで美しい体、魅惑的な瞳、そしてその明るい気性で知られる「ビルマネコ(バーミーズ)」――だが、その名前の由来ともなった原産国ミャンマー(旧ビルマ)での知名度はゼロに等しい。かつて王族の間でペットとして重宝され、寺院の守護動物ともされていたビルマネコは、近年になって一部の活動家らが連れ戻すまで、種発祥の地であるミャンマーからは姿を消していた。
国の遺産であるビルマネコを国内で復活させるプロジェクトを立ち上げたホテル経営者のイン・ミョー・スー(Yin Myo Su)さんは、同国東部シャン(Shan)州インレー湖(Inle Lake)の湖畔に立つ「Inthar Heritage House」で純血のビルマネコの繁殖を始めた。
2008年に同プロジェクトを通じて国外から集められたのは、わずか7匹。現在ではインレー周辺で50匹まで増え、観光客の間で人気を呼んでいる。うち9匹は子猫だ。
軽い猫アレルギーを持ちながらも同プロジェクトに情熱を注ぐイン・ミョー・スーさんは、去勢・不妊手術済みのビルマネコを地元住民には無償で、外国人には1匹50万チャット(約4万5000円)で譲り渡している。
国内での知名度向上を狙い、ミャンマーの民主化運動指導者でノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者のアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏にも1匹寄贈した。保護活動に欠かせない世間の注目を集めるにはうってつけのPR方法と思われたが、スー・チー氏宅で飼われる愛犬の「ねたみ」を買ってしまい、この猫はあえなく送り返されてしまった。現在は、イン・ミョー・スーさんの元で「いつかスー・チー氏と再会する日まで」暮らしているという。
このビルマネコ帰還プロジェクトは、非営利団体「中国探検学会(China Exploration and Research Society、CERS)」が発案した。CERSによれば、東南アジアの大陸部に1000年以上前から生息していたビルマネコは、やはり東南アジア原産のシャムネコなどと似た特徴を持つ。
しかし、19~20世紀にかけ東南アジアには多様な種のネコが流入し、そのため純血のビルマネコは姿を消してしまった。血統は、植民地時代に英国へと渡ったごく少数のネコたちによって保たれていた。現代に生きるビルマネコのほとんどは、1930年に米国に渡った雌ネコ「ウォン・マウ(Wong Mau)」の子孫だといわれている。
ビルマネコは短毛で金色の目をしている。毛色は濃い茶色が多いが、銀色に輝く青色からクリーム色まで幅広い。
さまざまな保全プロジェクトに携わるイン・ミョー・スーさんは、Inthar Heritage Houseを単なる「豪華なネコ小屋」で終わらせたくはないと語る。月800ドル(約6万3000円)かかる飼育費を補うため、ハウスにはミャンマーの伝統料理を味わえるレストランを併設した。また、別の保全活動として現在、インレー湖原産の魚類の研究と保護活動を行う施設を建設中だ。
ただ、イン・ミョー・スーさんが経営するインレー・プリンセス・ホテル(Inle Princess Hotel)の従業員らは、この新たな魚保護プロジェクトの真の目的は他にあるのではないかと疑っているそうだ。 「彼らは笑いながら私に『ネコの餌にする気ですか?』と言うんですよ」(イン・ミョー・スーさん) (c)AFP/Kelly Macnamara