【9月3日 AFP】フェラーリ(Ferrari)やランボルギーニ(Lamborghini)と並んで、いま高級車愛好家たちが最も熱い視線を送るスーパーカー「Renovatio T500」。意外にも、この高級車が造られているのは、スロベニア北東プトゥイ(Ptuj)にあるごく小さな自動車工場だ。

 モナコで開かれた高級車展示イベント「Top Marques」でRenovatioの試作車第1号が披露されてから、わずか6か月にして、製作者のアリョーシャ・トゥシェク(Aljosa Tusek)氏(46)は、ロンドン(London)近郊で5日から3日間の日程でセレブが集って開かれる高級車イベント「Salon Prive」に招待された。

 Renovatio T500は、元レーサーだったトゥシェク氏がタイヤ会社での仕事の傍ら余暇を利用してデザインし、自動車愛好家ら10人あまりと共に数年をかけて完成させた。

 プトゥイでAFPの取材に応じたトゥシェク氏は、「レースから引退する時期は来たが、レースの世界からは離れたくなかった」と語る。レーサー時代に自分が満足できる車がなかったことから、自分で満足のいく車を作ろうと思い立ったようだ。

 30万ユーロ(約2950万円)で売り出されたRenovatio T500は、英国放送協会(BBC)の人気自動車番組「トップギア(Top Gear)」でも、「驚異的に速く、俊敏、そして極めて洗練されている」と紹介された。

 高級スーパーカーの価格帯は50万ユーロ(約4900万円)~60万ユーロ(約5900万円)が通常だ。だが、トゥシェク氏は市場でRenovatioの名を浸透させるために価格を30万ユーロに抑えた。

   「フェラーリのような高級ブランド車は製造数が多く、市場に多く出回っているから、超富裕層にはあまり魅力的でない。もちろん彼らはフェラーリを所有しているけれど、もうステータスシンボルにはならないんだ。誰でも買えるからね」(トゥシェク氏)

 これまでにトゥシェク氏はRenovatio3台を製作し、うち2台を売り上げた。将来的には、技術者やRenovatio第1号の開発を手伝ってくれた知人ら10~15人を雇って製作期間を短縮し、年間10台を販売したいという。

 トゥシェク氏自身もタイヤ会社の社員を辞める考えはない。Renovatioの製作がストレス解消になっているという。

   「お金が欲しくて(Renovatioの製作を)始めたわけじゃない。自分が運転したい車を作ろうと思いついたから、始めただけだ」(トゥシェク氏)

 トゥシェク氏は、もしかなうならモナコかスイス、またはパリ(Paris)やロンドン(London)のような大都市に住みたいという。Renovatioの売り込み先として英国やフランスの富裕層を狙うトゥシェク氏は、これらの都市には経済危機に影響されない裕福な人々が大勢いるとみているからだ。

 年内に、もう3台のRenovatioを売りたいというトゥシェク氏。すでに性能でも価格でもRenovatioを上回る新車「Forego T700」の開発にも取り組んでいるという。

   「ここで作られる車は特別でなければいけない。車が好きで裕福な人たちに、他社とは一味違う車を届けたいと思っている」(トゥシェク氏)

(c)AFP/Bojan Kavcic