【8月1日 AFP】米国ジャーナリズム界の若きスターと言われるジョナ・レーラー(Jonah Lehrer)氏(31)が、米ミュージシャンのボブ・ディラン(Bob Dylan)を取り上げてベストセラーとなった、創造性についての自著の中で、ディランの発言をねつ造したことを認めた。ユダヤ系米国人向け雑誌タブレット(Tablet)の電子版が30日、明らかにした。

 ベストセラー本『Imagine: How Creativity Works(イマジン:創造性のはたらき)』には次のようなボブ・ディランの発言が登場する。「(クリエイティブな過程は)説明するのが難しい…(中略)それは、何か言うべきことがある、という感覚だ」

 ディランのファンであるマイケル・C・モイニハン(Michael C. Moynihan)氏は、タブレット誌の記事で「問題は、ディランがこのような発言をした証拠がないことだ」と指摘した。

 モイニハン氏は、書籍の第1章に登場するディランの発言とされる7か所の引用部分について、レーラー氏に質問状を出した。「そのうち3つは、この書籍以外では見かけたことのないものだった。少なくとも、書籍に登場するようなかたちでは。また、3つはディランの実際の発言が一部含まれているものだった。そしてもう1つは、元の発言の文脈から大きく引き離して、同書のストーリーに合致するように用いられていた」

 レーラー氏は当初、引用は、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)監督によるディランのドキュメンタリー映画『ノー・ディレクション・ホーム(No Direction Home)』で撮影された未発表インタビューからのもので、そのインタビューをディランのマネージャーのジェフ・ローゼン(Jeff Rosen)氏から入手した、とモイニハン氏に説明していた。

 だがその後、マネージャーのローゼン氏には会ったこともないし、映画の未発表の部分も見たこともないことをレーラー氏が認めた。「パニックになったんだ」と、レーラー氏は告白したという。

 米誌ニューヨーカー(New Yorker)の常勤ライターだったレーラー氏だが、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、レーラー氏が辞職したと報じた。

 また、『イマジン』を出版したホートンミフリンハーコート(Houghton Mifflin Harcourt)は、書籍の回収を発表している。(c)AFP