【7月20日 AFP】「喜びの庭」という名の北京(Beijing)の独身クラブには、中国語で「剰女(Sheng Nu)」と呼ばれる女性たちが集まって来る――「剰女」の多くは都会出身で高学歴、経済的に自立しているとの特徴を持ち、辞書によるその定義は「27歳を超えたすべての独身女性」とあるが、一方では「不要」との意味も併せ持つ。

 気さくな雰囲気の「喜びの庭」があるのは、北京市内のビジネス街の地下だ。将来の夫を探す女性たちのために、卓球やビリヤードといった娯楽設備のほかに、映画やハイキングなどの少々冒険めいたアウトドア活動まで、計80種類を超える「出会いの」アクティビティが用意されている。もちろん「スピードデート」もあるし、男女が2人きりになって互いをもっとよく知るための小さなブースもある。

 政府の後援を受ける中華全国婦女連合会(All China Women's Federation)が2010年に発表した世論調査では、「新しい社会現象」が確実に起きていることが示された。人口13億人のうち、独身の男女は合計1億8000万人に上り、また調査に応じた男性の92%が「女性は27歳よりも前に結婚するべきだ」と回答していたという。

 同調査以来、この「新しい社会現象」に関する本や映画が次々と登場し、女性誌はこぞって「何故こんなにも多くの女性が独身でいるのか」との理由を突き止めようとした。そうした書籍を手がけた1人、社会学者の呉迪(Wu Di)氏は「今の若い人たちは働きすぎで、仕事場以外に出会いの場所がない。このようなことは昔はなかった。一方で昔から変わらないのは、結婚したら家計をやりくりするという風潮だ。しかし新しい世代の女性たちはこの『やりくり』をしたがらない。1人で十分やっていける女性も多く、結婚のために生活水準を落とすという考えがない」と指摘する。

 中国の厳格な1人っ子政策も女性たちにかかるプレッシャーのひとつだ。親たちは1人しかいない子どもに結婚してもらい、孫を残してもらうことを強く望む。独身クラブ「喜びの庭」の入り口にある宣伝文句も、こう語りかけている。

「あなたは独身?お父さん、お母さんの気持ちを考えて。これ以上、心配をかけないでね」

 独身女性相手の婚活ビジネスは好況だ。2003年にオープンした「喜びの庭」は北京2か所に店舗を構え、会員数は1万2000人を超える。

 最近加入した34歳のシェリーさん(仮名)は、米国から帰国したばかりのPRコンサルタントだ。中国に戻ってからは親戚や親友たちと会うことを避けているという。理由はすぐに「お見合い」をさせられそうになるからだとし、「あちこちから来るプレッシャーだらけよ。母親が自分の友人の孫を見て、落胆してるのを感じるし」と内心を漏らす。

 しかし将来の伴侶として有望な候補は登場せず、シェリーさんは二つ目の修士号を取りに米国へ戻る準備を進めている。実はそう決意したのは、両親や中国での同僚や友人から逃れたいという気持ちからでもあるという。

「40歳になったら、また中国に帰ってくると思う。年を取りすぎて、みんなが私をそっとしておいてくれるようになるでしょうから」

(c)AFP/Virginie Mangin