【7月21日 AFP】「サスペンションOK、ステアリングもOK」…これは新車購入時のチェック…ではなく、若い世代の「育メン」向けのおもちゃ、ハイテクを駆使したスマートボディのデザイナーズ・ベビーカーのチェック項目だ。

 最近、まるで車を購入するような感覚で、わが子のためのベビーカーを選ぶ父親が増えているという。メーカーや営業担当いわく「ベビーカー=車輪=車=男性」という単純な方程式が成立しているようだ。

■ヴィクター&ロルフのユニセックス系ベビーカー

 オランダのファッションデザイナー、ヴィクター&ロルフ(Viktor & Rolf)は6月、ベビーカーメーカーのバガブー(Bugaboo)とコラボレーションし「マイ・ファースト・カー」を発売。グレー2色で彩色されたボディーにシルバーのホイール、人工皮革のハンドルバーといった渋めのデザインで、遊び心のナンバープレートも付いている。

 父親へのアピールを狙ったデザインは、ベビーカーに取り付ける小物入れなど備品にまで及んでいる。バガブーのマネージャー、ビタール・ルドリュ(Vital Ledru)氏は、ブラックレザー仕様のミニマルなデザインについて「ユニセックスを目指していますが、やや『男寄り』に傾いている。コンピューターを入れるコンパートメントやボトル入れも付いています」と説明する。

■「小回り」「サスペンション」「オフロード」、買い物デビューの合言葉

 サッカー選手のデビッド・ベッカム(David Beckham)や俳優のマット・デイモン(Matt Damon)、ロックバンド・コールドプレイのクリス・マーチン(Chris Martin)といった「セレブ育メン」が高級ベビーカーを押して歩く姿が、近年グラビアをにぎわせているように、昨今のベビーカーは男性たちを意識したデザインとなっている。

 ルドリュ氏は「男性の心をつかむデザインやブランド・ポジショニングがある。いわば父親たちが気にするのは、サスペンション、タイヤの種類、ブレーキング・システムなどだ」と語る。

 米国の子育てサイトの買い物ガイドでは次のような一文が記載されている。

「ベビーカーでショッピングに行かない男性は『小回りがきく』、『コラプシブルなスプリングアクション』、『オフロード性能』といったフレーズを散りばめて会話する絶好のチャンスを逃している」

■手掛けたのは「レカロ」のデザイナー、ロッカーにぴったり収納

 仏メーカーBabyzenの最新のベビーカーは、幌から金具までオールブラック仕様で、旅客機の頭上ロッカーにぴったり収納できるようデザインされている。

 デザインを手掛けたのは、自動車関連製品メーカーのレカロ(Recaro)と契約するジャン・ミシェル・ショードゥルジュ(Jean-Michel Chaudeurge)氏。採用されているハンドルバーは、身長2メートルの男性から背の低い女性まで、様々なユーザー向けに調節が可能となっており、「ベビーカーを押して歩く男性が自分のことを滑稽だと感じないように考案した」と同氏は語る。

 同製品についてはまた、駐車中の自動車の間を通る時などに便利な前方を照らすソーラー照明など、洗練された安全機能も充実。わが子を「守る男」たちには好評のようだ。(c)AFP/Emma Charlton