【7月11日 AFP】財政難にあえぐ米ペンシルベニア(Pennsylvania)州のスクラントン(Scranton)市――予算をめぐり市長と市議会とが激しく対立した結果、市職員の給与が最低賃金レベルにまで削減された。

 フィラデルフィアの北およそ120マイル(190キロメートル)にあるスクラントン市は、重工業や製造業が過去数十年にわたって外部へ流出し続けている「ラストベルト(Rust belt、さび付いた工業地帯)」の都市の1つ。ジョー・バイデン(Joe Biden)副大統領の生まれ故郷として知られるも、現在は米国の衰退した工業都市の代名詞となっており、中心部では店舗が軒並み閉鎖へと追いやられている。

 地元紙によれば市は13万3000ドル(約1000万円)の銀行預金がある一方、340万ドル(約2億7000万円)の債務を抱えている状態で、現在は財政破綻の危機に直面している。

 この状況の中、市長が市職員の給与支払いを借金でまかなうことを拒否したため、警察官や消防隊員、建設作業員などを含む市職員400人の給与は大幅に削減され、問題は法廷闘争に発展した。

■警察官の時給が570円に

 勤続2年の警察官の給与は時給換算で26ドル(約2000円)から7ドル25セント(約570円)に70%以上カットされ、また労組による契約のもとで時給18~20ドルを受け取っていた建設作業員の給与も7ドル25セントにまで引き下げられた。

 重機オペレーターのロジャー・レナード(Roger Leonard)さんは、米公共ラジオNPRNational Public Radio)に対し、これまでは2週間の労働で900ドル(約7万1000円)の小切手を受け取っていたが、今は340ドル(約2万7000円)しかもらえなくなったと語る。

「私には妻と2人の子どもがいる。妻は専業主婦だ。貯金が底を尽きれば、大丈夫とは言えなくなる。けれど、そうなる前に市が答えを見いだすだろうと思っているよ」

■衰退の一途たどる街、当座の資金繰りで対立

 だが、今回の問題の直接の原因は、クリス・ドハーティ(Chris Doherty)市長と市議会が予算案をめぐり対立を続けていることだ。

 市職員3人の訴訟で弁護士を務めるスティーブン・ホルロイド(Stephen Holroyd)氏は、借金で給与を調達することは可能だと述べ、「市が破産した訳ではない。政争が原因だ。ATM(現金自動預払機)を使うのを止めようと(市が)決めただけ」と批判した。

 この件について市長からのコメントは得られなかった。(c)AFP/Daniel Kelley