ネパールの少女強制労働「カムラリ」、2016年までに撲滅目指す
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【7月9日 AFP】シャンタ・チャウダリ(Shanta Chaudhary)さん(32)が、「事実上の奴隷」として75ドル(約5900円)で両親に売られ、ネパール南西部の見知らぬ家庭で1日19時間の労働をさせられるようになったのは、8歳のころだった。
いまや活発な人権活動家で元政治家、そしてネパールで最も影響力のある女性の1人になったチャウダリさんだが、「カムラリ(kamlari)」として過ごした18年間に目撃した他のカムラリたちのことを思い返し涙をこぼす。労働のために朝4時に起床しなくてはならないカムラリたちは、日常的に暴力を振るわれるだけでなく、性的暴行や虐待まで受けていたという。
「虐待は覚えている。病気のときも自分(の体重)よりずっと重たい荷物を持たされた。両親に会うこともできず、母親の愛を経験したことは一度もなかった。過去を振り返ると、心臓が破裂しそうになる。多くのカムラリたちはレイプされた。私はそれを目撃した」
奴隷制度が廃止されて90年が経過した今もなお、ネパール南西部に根強く残るカムラリ。幾世代にもわたって、タルー人(Tharu)の娘たちは早ければ6歳のころから地主や仲介業者に売られ、何年間も単純労働に従事させられ、さまざまな虐待を受けてきたとされる。
児童労働反対世界デー(World Day against Child Labour)に開かれた国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の会議で、チャウダリさんは次のように語った。
「児童労働に従事する子どもたちは夜寝ることができません。遊ぶことができません。手は労働で荒れています。愛情を受けていませんし、子どもたちにとってはとても不安な状況なのです」
■「私の手が乾いたことはなかった」
チャウダリさんは、小規模農家の多い、乾燥したダン(Dang)地区で生まれ育った。わらぶき屋根の泥壁の住宅には電力はなく、家族は毎日の食料を確保することで精一杯だった。
チャウダリさんの両親には9人の子どもがいた。土地を所有しておらず、仕事がなかった両親は、年間6600ルピー(約5900円)でチャウダリさんを奉公に出した。
チャウダリさんは朝4時に起床し、労働は夜の11時まで続くことも頻繁だった。近くの森で集めた穀物を食べ、殴られることも多かったという。
「ずっと働きっぱなしだったから、手が乾燥することがなかった。私の子ども時代の全てが、カムラリとして費やされた」とチャウダリさんは振り返る。
だが強制労働状態から抜け出し、32歳になったチャウダリさんは、とっておきの笑顔で子ども時代の苦しみを覆い隠す。今は他の少女たちの支援活動に取り組んでいる。
カムラリを違憲とした2006年の最高裁判決で自由の身になったチャウダリさんは、土地の権利を求める運動で先頭に立った。その活動は首都カトマンズ(Kathmandu)まで届き、ネパールの統一共産党(Unified Marxist-Leninist、UML)の目に留まることになった。
■変わる潮流
10年前、およそ1万4000人の少女たちがカムラリ制度により自由を奪われていた。だがチャウダリさんら活動家の努力もあり、潮目は変わりつつある。慈善団体はこれまでに数千人の少女を救った。
ユニセフのウィル・パークス(Will Parks)ネパール副代表は「これら子どもたちの権利は深刻に侵害されている。守られた環境の中で成長し、学び、遊ぶことは子どもの権利だ」と語る。
現在、国際労働機関(ILO)は、ネパール政府と協力して、この最悪の児童労働を2016年までに撲滅するための基本計画の導入を進めている。(c)AFP/Frankie Taggart