【6月22日 AFP】米ニューヨーク(New York)州を走るスクールバス内で、生徒たちから「集団いじめ」を受ける60代の女性の姿を撮影した動画がネット上で注目を集め、心を痛めた人々からこの女性に33万ドル(約2650万円)を超える寄付金が寄せられた。

 全米中の関心を集めたのは、ニューヨーク州ロチェスター(Rochester)近郊のグリース(Greece)でスクールバスの誘導係を務めるカレン・クライン(Karen Klein)さん(68)が、バスの中で12~13歳の生徒から嫌がらせを受け続ける様子を撮影した約10分の動画。19日夜に、ユーチューブ(YouTube)やフェイスブック(Facebook)に投稿された。

 8人の孫を持つ白髪のおばあちゃんでもあるクラインさん。動画では、生徒たちから「でぶ」「間抜け」などと罵倒されながらも、けなげに耐え続ける姿が捉えられていた。

 だが生徒たちのいじめ行為は、さらにエスカレートした。クラインさんの耳が遠いことや体重、髪型などをけなし始め、中には、クラインさんにもたれかかり「家の前で放尿してやる」と言い放つ生徒の姿や、クラインさんをばかにするポーズをとったり、あざ笑ったり、小突いたりする生徒も見られた。

 クラインさん自身は、生徒たちのいじめを報告することはしなかったが、スクールバスに乗り合わせたほかの生徒がいじめの様子を携帯電話で撮影し、これをインターネットに投稿したところ、瞬く間に全米中に衝撃が広がった。

■休暇をとって心の傷を癒して

 動画を見た人々は、クラインさんに休暇をとって心の傷を癒してもらおうと資金調達サイト「Indiegogo」で募金を開始したところ、すぐに目標額の5000ドル(約40万1400円)に達した。その後も募金は増え続け、21日午後までに33万8650ドル(約2700万円)が集まった。

 クラインさんに寄せられた多くの支援に、クラインさん本人も大感激した様子で、「こんなに大きな世界がすぐそこにあるなんて、今まで思いもしなかった。本当に素晴らしいことです」と語った。心優しい励ましのメッセージは、手紙やEメール、フェイスブックでも届けられたという。

 一方で学校側は、いじめに関与した生徒4人を罰則の対象にすると発表した。

 さらにいじめに関わった生徒たちは、未成年ながらも氏名や電話番号がネット上にさらされるという形で、一般大衆からの「お仕置き」を受けている。地元警察によると、このうち1人の生徒の携帯電話には700件もの脅迫電話があったという。(c)AFP