美容整形にも「韓流」の波、 韓国で整形する外国人が急増
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【4月23日 AFP】韓国・ソウル(Seoul)でジュ・クォン(Joo Kwon)氏が経営する美容整形外科「JK整形外科医院(JK Plastic Surgery Center)」で、中国から施術に訪れる女性たちが目立ち始めたのは2005年前後のことだった。
当時、JK医院では特に海外向けの宣伝はしていなかった。「どうやって当院を見つけたのかは分からないが、ほとんど全員が『イ・ヨンエ(Lee Young-Ae)』のような顔になりたいと言うんですよ」(ジュ院長)
イ・ヨンエとは、アジア全土でヒットした韓国の歴史ドラマ「チャングムの誓い」の主演女優のことだ。
韓国随一の美容外科であるJK整形外科医院だけでなく、いまでは、その他の美容クリニックへも、韓国ドラマやK-POPに魅せられた中国人女性たちが大挙して押し寄せている。
この10年で「韓流」と呼ばれる韓国ドラマや音楽の波は中国や東南アジア、日本を席巻。これらの国々ではゴールデンタイムに韓国ドラマが流れ、K-POPスターのコンサートも盛況だ。
そして現在、容姿が重要視される韓国で腕を磨いた一流の技術を持つ美容整形外科医たちが、思いがけず「韓流」の恩恵にあずかっている。彼らのもとを、多くの海外女性が訪れているのだ。彼女らが憧れる韓国人女優たちの美も、美容整形外科医の手を借りた場合も少なくない。
■韓流女優にあこがれて
政府統計によると、訪韓外国人の医療費支出は2011年、史上最高の1億1600万ドル(約94億円)に達した。このうち14%が美容整形や、しわ取りなどの皮膚施術の費用だとみられる。
鼻の整形、フェースリフト、顎の矯正、腹部の脂肪除去で韓国の整形医を訪れた外国人の約半数は中国人で、その数は2009年の1657人から2010年には4400人に急増している。
大韓整形外科学会(Korean Society of Plastic and Reconstructive Surgeons)のホン・ジョングン(Hong Jeong-Geun)広報担当によれば、韓流ブームが海外から訪れる美容整形客の急増の主な理由であることは間違いないという。
ホン氏はAFPの取材に、「韓国人スターたちの中には、生まれつき美しいというよりも、ちょっとだけ美容整形外科医の手を借りた人がいることを、彼らは知っているのです」と話した。
高級店が立ち並ぶソウルの江南(Gangnam)地区は、ジュ院長のJK整形外科医院をはじめ400以上もの美容整形クリニックがしのぎを削る激戦区だ。
JK整形外科医院を訪れる人の半数以上が中国や日本、中東からの外国人だ。なかには遠くアフリカから来た人もいる。海外からの客は外国語を話す同院スタッフが空港で出迎え、リムジンで医院まで送迎する。同院では英語、中国語、日本語、ベトナム語、モンゴル語を話すスタッフを揃えている。
■行き過ぎた整形熱に懸念
中国東北部の都市、吉林(Jilin)から訪れた建設会社社長の娘だという24歳の中国人女性はAFPの取材に対し、「顔はソン・ヘギョ(Song Hye-Gyo)のようにして、鼻はハン・ガイン(Han Ga-In)のようになりたい」と具体的な韓国人女優の名を挙げて説明した。約10万元(約130万円)の手術費は、数か月間両親にお願いして出してもらったという。
中国では、ソウルで放映されたドラマが翌日には、字幕付きでウェブサイトで見ることができる。この女性は「韓国ドラマファンの友だちも、ここで美容整形したがっている。韓国の美容整形技術はアジアで一番だと思うから」と語った。
韓国政府は、規制緩和や予算の割り当てに加え、外国向けの情報発信や優れた医療機関の表彰までして、あらゆる形の医療ツーリズムを後押ししている。その一方で、美容整形医たちの間には懸念もある。
ジュ院長は、韓国人の間で美容整形熱が過熱することは好ましくないと考えている。「韓国人の美人に対する概念は非常に厳格で狭い。われわれが民族的に単一社会で、多かれ少なかれ皆、容姿が似通っているためだ。これは自尊心が低いことにも関係している」。こうした状況は社会が多様化するにつれ改善されていくだろうが、それにはまだ時間がかかるだろうとジュ院長は語った。(c)AFP/Jung Ha-Won