【3月26日 AFP】色覚障害者たちにとって、路線ごとに色分けされた地下鉄路線図の識別や、衣服の選択、赤いりんごと青りんごの区別は容易なことではない。

 だが、ポルトガルで1人のデザイナーが続けてきた先駆者的な研究によって、赤と緑など色覚障害者が区別しにくい色を簡単に見分けられる画期的なカラー識別コードが登場。こうした色覚障害者たちの悩みも解消に近づくこととなりそうだ。

 このカラー認識コード「ColorADD」コードを10年近くかけて開発したデザイナーは、北部ポルト(Porto)のミゲル・ネイバ(Miguel Neiva)氏(42)。当初はネイバ氏が、修士論文研究として始めたものだった。

 このカラー識別コードは原色を基本とし、例えば斜めの1本線は黄色、赤と青はそれぞれ逆方向を向いた三角形で示される。色調の違いは、それぞれの記号を白か黒の四角で囲うことで表す。

■地下鉄、病院から腕時計にも

 複数の視覚関連団体によると、何らかの色覚異常がある人の割合は女性では1%なのに対し、男性では8%にのぼり、ネイバ氏によると、色覚異常がある人の90%が衣服を選ぶ際、色の区別に補助を要し、約40%が社会生活上で何らかの困難を抱えているという。

 今回開発されたカラー識別コードは、ポルト市内の地下鉄をはじめ洋服、スイスの腕時計ブランド「スウォッチ(Swatch)」の素材や模様などの識別用に採用された。

 ポルトガルで最大の病院の1つであるサン・ジョアン(Sao Joao)病院でも、治療内容に応じて患者に付けるリストバンドに、ネイバ氏の識別コードを採用。同病院のフェルナンド・ファルカオ・レイス(Fernando Falcao Reis)眼科長は「似たような試みは、これまでもあったが、今回のシステムは画期的。非常にシンプルで覚えやすく使いやすいので、国際的にも広がる可能性がある」と絶賛した。
 
 ネイバ氏によると、このカラー識別コードは色覚異常者の間でも好評で、同氏を「ヒーロー」とあがめる世界中の人々から寄せられるメッセージへの返信に、毎日1時間を費やしているという。さらにネイバ氏は、識別コードが2016年にブラジルのリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)で開催される五輪で採用されることにも期待を寄せる。

 次にネイバ氏が開発構想を練るのは、マウスをクリックするだけでコンピューター画面上の色を識別できるシステムだ。(c)AFP/Thomas Cabral

【参考】カラー識別コード「ColorADD」の説明(英文)