【3月23日 AFP】75年前に赤道上世界一周飛行の途上、現パプアニューギニアを出発後に消息を絶った米国の女性飛行士アメリア・イアハート(Amelia Earhart)の最期に関する真相解明を、米政府が支援する。米国のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)国務長官が20日、国務省で開かれた太平洋の島しょ国キリバス外相の歓迎式典で支援を公言した。

 イアハートの最期は今でも航空史ミステリーの1つだ。1937年、イアハートは地球一周の最長ルートとなる赤道上飛行に向けて、ナビゲーターのフレッド・ヌーナン(Fred Noonan)とともに現パプアニューギニアを出発した後、行方不明となった。当時、米国は世界大恐慌(Great Depression)の最中にありながらも2人の大規模捜索を惜しまなかった。しかし、2人が発見されることはなかった。イアハートとヌーナンが消息を絶ってから短時間内に死亡したのか、それとも漂流者としてしばらく生存していたのかという謎も残る。

 歓迎式典で、クリントン長官は女性飛行士の草分けとなったイアハートは、自分自身および米国双方にとってのヒロインだと称え、次のように述べた。

「当時の世界は先行き不透明で危険な状況にあった。こうした世界を導くリーダーとしての自信をアメリカは深めつつあり、その来るべきアメリカの精神を体現していたのが彼女(イアハート)だった。彼女は人々に希望を与え、より大きく強くという夢を呼び起こした。そして、あの歴史的な旅に飛び立ったとき、彼女はわが国の大志を抱いて空に飛んでいった」

 クリントン長官は、イアハートが乗っていたロッキード・エレクトラ(Lockheed Electra)の機体を探す遠征隊を精神的にも支援したいと語った。


■キリバスで7月に深海捜索へ

 式典には「歴史的航空機の発見を目指す国際グループ(TIGHARThe International Group for Historic Aircraft Recovery)」のメンバーも参加し、キリバス領ニクマロロ(Nikumaroro)島周辺の深海での機体捜索を7月に計画していると発表した。

 TIGHARのリック・ガレスピー(Ric Gillespie)事務局長は、イアハートが行方不明となった1937年、イアハートの捜索とは別に入植候補地として無人島を調査していた英国の遠征隊が撮影したニクマロロ島の写真を見つけた話を明かした。

 この写真には「点」のようなものが写っていたが、詳細に分析した結果、この「点」は遭難したエレクトラの前輪部だとガレスピー氏は確信したという。この写真についてガレスピー氏は「有力ではあるが状況的」な証拠の段階だとし、「自分たちにできることは、現場へ行き最善を尽くして何が見つかるか探すことだけだ」と述べ、ニクマロロ島周辺全域を捜索する決意を示した。

 写真の分析やキリバス政府との交渉などは米政府が支援するが、捜索活動は民間の寄付があてられている。

 その一方で、ガレスピー氏はTIGHARが以前、ニクマロロ島で人骨らしきものを発見したと発表していたことについて、検証の結果、人骨だとは特定できなかったと明らかにした。

■タイタニック号発見の海洋学者も協力

 エレクトラ捜索については、深海に沈んだ豪華客船タイタニック号(Titanic)の残がいを1985年に発見した海洋学者のロバート・バラード(Robert Ballard)氏も協力を申し出た。同氏は第2次世界大戦中に撃沈されたヨークタウン(Yorktown)やビスマルク(Bismarck)などの戦艦も発見している。

 だが、これまでの捜索活動と比べ、イアハート遭難機の捜索は相当、広範囲となる。バラード氏はイアハート機の発見は「干草の山の中から1本の針を探すようなもの」で、本気で取り組むならば深海探索の中でも最優先で行うべきだと述べた。

 一方、カート・キャンベル(Kurt Campbell)米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、キリバスを実際に訪問した経験からエレクトラ捜索プロジェクトに関心を抱くようになった。キャンベル次官補は、国務省もエレクトラ発見に期待を抱いているとしながらも、「75年間も大きな謎のままだったことだ。おそらく20世紀最後の未解決にして最大のミステリーだろう」と述べ、発見の困難さも認識していると語った。(c)AFP/Shaun Tandon

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