【3月15日 AFP】244年前に初出版された権威ある百科事典「ブリタニカ百科事典(Encyclopaedia Britannica)」を出版してきた米エンサイクロペディア・ブリタニカ(Encyclopaedia Britannica)は13日、オンライン版に完全に移行すると発表した。

 同社のホルへ・カウス(Jorge Cauz)社長は声明で「しばらく前から検討してきた印刷版の終了に踏み切ることで、今後はデジタル学習製品の制作企業としてさらなる進化をとげる」と述べた。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)はひとつの時代の終わりをうたい上げた記事で、「知的で権威ある」ブリタニカの百科事典は、1ランク上を目指す中産階級の憧れの的となり、1950~60年代にはよくセットで購入されていたと書いた。

 だが同百科事典の米国での販売は1990年の12万セットをピークに激減。2010年版は印刷した1万2000セットのうち売れたのは8000セットのみだった。背景にはオンライン百科事典ウィキペディア(Wikipedia)の急激な台頭で、多くの米国人が何かを調べるときにまずインターネットを参照するようになったことがある。

 同紙は、かつて訪問販売の営業部隊が売り歩いた1395ドル(約11万7000円)の百科事典セットはぜいたく品になったとしている。

 米エンサイクロペディア・ブリタニカは1981年に法律関連データベースLexisNexisのユーザー向けに初のデジタル版を発売したのを皮切りに、1989年にはマルチメディアCD、1994年には年会費が必要な有料コンテンツを含む同百科事典のオンライン版の提供を開始した。同社によると、このオンライン版百科事典の利用者は全世界で1億人に達しているという。(c)AFP