【2月18日 AFP】情熱的なサンバのビートに合わせて腰をくねらせ、杖を振るジョバンナ・マイラ(Giovanna Maira)さん(25)の本職は、シンガーだ。幼い頃に失明した彼女だが、ブラジル・サンパウロ(Sao Paulo)のカーニバルで審査員を務めることになっている。

 ブラジルと言えばリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)のカーニバルが世界的に有名だが、人口2000万人のサンパウロで行われるカーニバルも年々成長し、華やかさはライバルのリオと並ぶとも言われている。

 そのサンパウロのカーニバルでは、今月16~17日に行われるファン待望のサンバスクールのパーカッション・コンテストの審査員を、初めてマイラさんら視覚障害者が務めることになった。審査員に決まった視覚障害者5人は、サンバスクール連盟と市長室の監督のもと、パーカッションの理論と実技の訓練を受けてきた。

 パーカッションの審査員に視覚障害者を採用したのには、多様性を称賛する意味合いがある。「障害があろうがなかろうが、みんなが、平和にリズムを刻みながら共存できるのです。サンバスクールのようにね」と、マイラさん。

■審査員に求められる客観性

 だが、もう1つの狙いもある。視覚障害者は衣装や山車やダンスに左右されず、音楽の要素だけを、他の誰よりも客観的に採点できると期待されているのだ。

 審査員の訓練を受け持った男性は、「非常に競争の激しいコンテストでは、視覚障害者が採点するのがベスト」だと語った。「視覚を失うと聴覚が発達することが、科学的にも証明されていますしね」

 審査員たちは、自分たちにプレッシャーがかけられていることを知っており、できる限り公平な耳で採点しようと心に期している。

 盲導犬を連れたある審査員の男性(25)は、カーニバルが体中の血に行き渡ったと述べた。「(訓練で)聞くことを学びました。ドラムの音だけでなく、体で感じる音もです」

 なお、今年のカーニバルには、視覚障害者で作るサンバスクールも出場するという。(c)AFP