【2月10日 AFP】先月の春節に家族を連れて極寒のニューヨーク(New York)を訪れた中国人の男性は、「辰年」の始めにふさわしく4歳の息子を鍛えることにした。深い雪の中をほぼ全裸で走らされた男の子を撮影したホームビデオの映像がネットで公開され、中国のネット社会で論争を呼んでいる。

 ビデオの中で、ブリーフと靴だけを身に付けた男の子は、時折泣きながら、抱きかかえてくれるよう懇願しながら、ビデオカメラを構える父親に向かって全力疾走する。両親に雪の上に寝転がるよう命令され、母親に押されていやいや寝転がるシーンもある。

 中国・南京(Nanjing)で寝具会社を営んでいるこの男性はAFPの取材に、「息子が強く男らしくなるよう訓練していただけ。息子も同意した。でなければ、服を脱がせるなんてできっこない」と話した。全力疾走の前に30分間のウォーミングアップをさせたとも言う。

 誰がこのビデオを投稿したのかは分からない。男性の秘書を務める女性によれば、男性はビデオを「何人かの友人」に配布した。彼自身は投稿していないという。

■「タイガー・マザー」式子育てへの議論が再燃

 男性には「イーグル・ダッド(Eagle Dad)」のあだ名が付けられた。中国系米国人でエール大(Yale University)教授(法学)のエイミー・チュア(Amy Chua)氏が執筆した育児本『Battle Hymn of the Tiger Mother(母トラの戦いの歌)』にちなんだ名前だ。

 同書は中国式の厳格な子育てを奨励する内容のものだ。チュア氏は、自分と夫が2人の娘たちをいかに厳格に育てたかを説明する。例えば、テストで100点満点をとるよう強いプレッシャーをかける、外泊させない、テレビを見せない、ピアノかバイオリンを習わせる、などだ。ピアノの練習をさぼったので寒空の下で娘を立たせた、夕食会の席で娘のことを「ガーベッジ(くず)」と呼んでいたと話したら会場が凍りついた、などのエピソードも紹介されている。

 本の抜粋が昨年、米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)で公開されるや、チュア氏には多くの批判が寄せられ、殺害予告も舞い込んできた。今回のビデオをきっかけに、議論が再燃している。

■賛否両論

 ビデオに映っていた男の子は、男性の秘書によると、複数の健康障害を抱えながら未熟児で産まれてきた。医師に脳性まひもあるかもしれないと言われたという。

 だが男性は、息子に、カンフー、ダンス、サイクリング、登山など、さまざまなトレーニングをやらせた。1歳で早くも水温21度のプールで泳ぎ始め、寒い日には胃が寒さに慣れるようにと冷たいアイスクリームを与えられた。「息子はほとんど風邪をひかないんだ」と、男性は自慢げだ。秘書も、「厳しいトレーニングの甲斐あって、あの子は今では健康問題が1つもない」と男性を称賛した。

 中国版ツイッター「新浪微博(Sina Weibo)」に寄せられるコメントは、「子供のためだと言って厳しくしつけるのは、自分が将来、自慢したいからだ」「子供がかわいそう。母親は父親のさせたいままにしているのか?」など、大半が批判的だ。

 一方で、「子供に寒さと不屈の精神を教えるのはいいことだ」「彼は残酷だが、子供のことを思ってのことだ。この子供は、携帯電話やパソコンとたわむれることしかできない今の若者のようにはならないだろう」など、肯定的な意見もある。

 男性は、怒涛のように押し寄せる批判を全く意に介していないようだ。秘書は、「彼は他人の言うことなど気にしていません。ビデオの中の息子は粘り強さと活力を体現していると言っている」と話した。(c)AFP/Marianne Barriaux

【動画】雪の中を走らされる男の子(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)
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