【2月9日 AFP】ネパール南西部の山間、ダン(Dang)郡にある村に住むチャンドラ・バハドゥール・ダンギ(Chandra Bahadur Dangi)さん(72)は、自称身長56センチ、体重12キロしかない小さな男性だ。

 これまで何度も笑いものにされてきたダンギさんだが、その人生が大きく変わるかもしれない。ギネス世界記録(Guinness World Records)が前週、ダンギさんが世界一、小さい男性であることを確認するために調査員を派遣すると発表したのだ。

 現在、生存する「世界一背の低い男性」の記録を持つのは、フィリピンに住む身長59.93センチのジュンレイ・バラウィン(Junrey Balawing)さんだ。だが、ダンギさんの主張する身長が正しいことが証明されれば、ダンギさんは「世界一背の低い男性」のタイトルを手にするだけでなく、記録史上最も背の低い男性となる。

 これまでの記録で最も背の低かった男性は、インドのグル・ムハンマド(Gul Mohammed)さんで、1997年に40歳で死去する前に測った身長は57センチだった。

 AFPはこのほど、首都カトマンズ(Kathmandu)から南東280キロのSurungaで、欧米メディアとしては初めてダンギさんにインタビューした。

 ダンギさんは、人生の晩年になって世界記録が認定されれば、長年耐えてきた辛い日々も報われると語った。「状況もだいぶよくなると思う。世界中で有名になれたら、いいだろうね。外国にも行ってみたいし、世界の人たちと会ってみたいよ」

 現在は年金で生活するダンギさんは、12歳で孤児となった。5人いた兄弟は、みな普通の身長だったという。

 ダンギさんは72歳になるこれまで、一度も恋愛をしたことがなく、心から信頼しあえる運命の人にも出会ったことがない。「子どものころから、ずっと背が低いままだったから、若い時に結婚してくれる女性が見つからなかった。そのうち結婚する考えそのものを、あきらめてしまった。こんな年になって、もう結婚には興味もないね」

 ダンギさんの身長の成育が阻害された原因は謎のままだ。だが、世界で「身長の低さ」を誇る人々は、原発性小人症が原因である場合がほとんどだ。

 若いころ、ダンギさんの親戚は祭りでダンギさんを見せ物にして金を稼いでいたという。だが、親戚は得た金銭をダンギさんに分け与えることはなかった。

 ダンギさんは、「まるで、おもちゃのように扱われた」と地元紙リパブリカ(Republica)に語っている。

 ダンギさんの一族の歴史を調べていたネパールの研究チームが前週、ダンギさんを紹介されたことから、彼は一躍、世界の注目を集めることとなった。

「世界一身長が低い人」の世界記録をめぐっては、同じネパール人のカジェンドラ・タパ・マガル(Khagendra Thapa Magar)さんが1年間だけタイトルを保持していた。2010年に測定されたマガルさんの身長は67センチ。

 その後、マガルさんは欧米のテレビに出演。ネパール政府も、「世界最高峰エベレスト(Mount Everest)の国の世界一背の低い男性」と銘打って、マガルさんを宣伝役に起用した観光誘致キャンペーンを行った。

「世界一背の低い男性」のギネス認定は、マガルさんに名声をもたらしたと、父親のラプ・バハドゥウール・タパ・マガル(Rup Bahadur Thapa Magar)さんはAFPの取材に語った。「カジェンドラは32か国に招待され、名誉をうけた。息子とともに私も米国や香港、英国、フランスなどの国々を旅行できたよ」

 ダンギさんについては、「もし彼が世界一、背の低い男性に認定されたら、誇りに思うよ。世界タイトルが再びネパールに戻ってくるのだらかね」と歓迎する意向を示している。(c)AFP/Prakash Mathema

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【動画】
◆ネパールで暮らすダンギさん(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)