【2月2日 AFP】オーストラリア・メルボルン(Melbourne)でバス会社を経営する男性が、会社を売却するにあたり、感謝の気持ちとして総額1500万豪ドル(約12億2400万円)を特別ボーナスとして支給し、社員たちを感激させている。

 この気前の良い経営者はケン・グレンダ(Ken Grenda)さん(79)。このほど66年間営んできた家族経営のバス会社を売却し、自分は引退することを決めた。グレンダさんは売却によって手にした大金を、骨身を惜しんで働き、会社に尽くしてきた社員たちと分かち合いたいと考えた。

 豪紙ヘラルド・サン(Herald Sun)によれば、自分の銀行口座に数千ドルが振り込まれているのを目にした総勢1800人あまりの社員のほとんどが、銀行側の間違いだと思ったという。

 1人当たりのボーナス額は平均8500ドル(約70万円)だが、なかには10万ドル(約820万円)を受け取った社員もいた。
 
「好調なビジネスは良い社員あってこそ。その点、わが社の社員は実に素晴らしい」とグレンダさん。「これは、そのことへのお礼だ。親子二代にわたって働いてくれている社員もいるし、52年間も同じ仕事を続けている社員もいる」

 インドからメルボルンに移住し、グレンダさんの会社で5年間、バス運転手として働いてきたバーノン・フランクリン(Vernon Franklin)さんは、社員に対するグレンダさんの思いやりに感無量だと、豪テレビ「チャンネル・ナイン(Channel Nine)」に語った。「彼がいなくなるなんて、とても惜しい」

 同じくグレンダさんの会社に15年間、勤務するイアン・ビバリッジ(Iain Beberidge)さんによれば、従業員がグレンダさんに感謝しているのは金銭に限った話ではない。グレンダさんは常に家族の一員のように社員に接し、面倒をみてきたという。「営業所に来ると、必ず全員と握手をして『元気かい?』と声をかけていた」

 グレンダさんのバス会社は同業社のベンチュラ(Ventura)に買い取られた。社員は全員が、新会社にそのまま雇用されるという。(c)AFP