【1月19日 AFP】世界で妊娠中絶の長期的な減少傾向が鈍るとともに、危険な中絶が増えているという報告が、19日の英医学誌「ランセット(Lancet)」に発表された。

 調査は、性と生殖に関する健康を研究している米グットマッカー研究所(Guttmacher Institute)が、世界の15~44歳の女性を対象に行った。

 これによると妊娠中絶の割合は、1995年には15~44歳の女性1000人につき35人だったのに対し、2003年には29人に減っていた。しかし08年は、03年からほとんど変化がなく28人だった。これは発展途上国での中絶が増えたためという。

 08年の世界の中絶件数は、03年より220万件多い4380万件だった。この理由について研究チームは、世界人口が増加する一方で、特に発展途上国を中心に避妊が普及していないことを挙げている。現在、世界の中絶の4分の3以上は発展途上国で行われているという。

 地域別にみると、08年に中絶が多かったのは、共産圏時代の名残で中絶が容易だが避妊薬の普及が遅れている東欧(43人、15~44歳の女性1000人あたり。以下同じ)、次いでカリブ海地域(39人)、アフリカ東部(38人)、アフリカ中部と東南アジア(ともに36人)だった。

 逆に中絶が少なかったのは順に、西欧(12人)、アフリカ南部(15人)、オセアニア(17人)、アフリカ北部(18人)、北米(19人)だった。
 
■増える危険な中絶

 報告は危険な中絶が急増していることに警鐘を鳴らしている。世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の定義によると危険な中絶とは、必要とされる技術を持たない個人が施術する場合や、最低限の医療水準を満たさない環境で行われる場合、またはその両方が重なっている場合を指す。

 08年にはそうした危険な中絶が原因となり、10万件につき220人の割合で母親が死亡した。米国の合法中絶の母体死亡率の35倍にあたり、死亡した世界の妊婦のうち7人に1人が中絶が原因だった計算になる。発展途上国では毎年約850万人の女性が、妊娠中絶による合併症で治療が必要になっている。

 地域別にみると最も中絶の危険が高いのは中米、南米、アフリカ中部、アフリカ西部で、ほぼ全ての中絶術が安全ではないと分類されている。これは中絶術の99.5%以上が安全とみなされる西欧、北米と対照的だ。

 アジアの状況は一様ではなく、東アジアでは危険な中絶術は全体の0.5%未満であるのに対し、南アジアと中央アジアでは中絶術の65%が危険とみなされている。(c)AFP