【1月12日 AFP】インドのアンダマン諸島(Andaman Islands)で非文明的な生活を続ける先住民ジャラワ(Jarawa)人の女性たちが、食べ物と引き換えに観光客相手に踊らされる動画がインターネットで公開され、人権団体などが非難の声を上げている。

 問題の動画は英紙オブザーバー(Observer)が公開したもので、撮影年月日は不明。ジャラワ人の女性たちが、カメラに向かって歌い踊るよう煽られる様子が映っており、中には全裸の女性もいる。女性たちを踊らせるために、現地の警察官に賄賂が渡されたものとみられる。

 V・キショレ・チャンドラ・デオ(V. Kishore Chandra Deo)部族問題相は11日、動画の事実関係に関する調査を指示したことを明らかにした。

 ジャラワ人はアフリカからアジアに移り住んだ初期の集団のひとつと考えられ、アンダマン諸島の熱帯林で非定住生活を送っているが、現存するのは403人だけで、存亡の危機に瀕している。

 インドの法律は、外部文化の影響や病気などから先住民を保護する目的で、外部の人間がジャラワ人を始めアンダマン諸島の先住民の写真を撮ったり、彼らと接触することを禁じている。

 英国を拠点に世界各地で先住民支援を続ける国際団体サバイバル・インターナショナル(Survival International)は、観光客がまるで「人間動物園」のようにジャラワ人の様子を面白がっていると動画を批判。声明で「ジャラワの人たちはサーカスの馬ではない。踊らせて物を与えるなどもってのほかだ」と非難した。

 一方、アンダマン諸島についての研究を専門としている人類学者アンスティス・ジャスティン(Anstice Justin)氏は、動画の撮影時期に疑問を投げかける。

 AFPの電話取材に対し、ジャスティン氏は「以前はジャラワ人に踊りを強要する者もいたかもしれない。しかし、2004年のスマトラ沖地震による大津波の後は、ジャラワ人に最大限の自治が与えられるようになった。今日ではジャラワ人に対する様々な保護策が敷かれている」と語った。

 ジャスティン氏は、動画は数年前に撮影されたものではないかとみている。地元警察も同様の見方で、ジャラワ人たちが人前でまだ衣服を身に着けていなかった6~7年前の映像である可能性が高いという。

 だが、オブザーバー紙によれば、最近でも観光客が道端にいた先住民たちにバナナやビスケットを放り投げる様子を、同紙の記者が目撃している。さらに、この記者は地元の商人から、警官にいくら賄賂を払えばジャラワ人を1日連れ出せるか、教えられたという。

 サバイバル・インターナショナルは昨年6月、ジャラワ人を間近で撮影できるとうたった「人間サファリツアー」を運営するインドの旅行業者8社を糾弾した。アンダマン諸島を訪れる観光客らには、旅行業者がジャラワ人居留地に通じる道路に進入しようとした場合、それを拒否するよう呼び掛けている。(c)AFP/Pratap Chakravarty