【12月29日 AFP】28日の英紙タイムズ(The Times)は、「今年の人」に、「アラブの春」の引き金となったチュニジアの果物売り、モハメド・ブアジジ(Mohammed Bouazizi)さん(享年26)を選んだ。

 ブアジジさんは昨年12月17日、チュニジア中部のシディブジッド(Sidi Bouzid)で、当局からの嫌がらせに抗議して自らに火を放ち、大やけどのため翌1月初旬に死亡した。

 この行動は当時のジン・アビディン・ベンアリ(Zine El Abidine Ben Ali)政権を崩壊させる民衆蜂起に発展。抗議のうねりは北アフリカと中東地域に拡大し、エジプトのホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領の退陣とリビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の打倒へとつながっていった。

 タイムズ紙は、選考理由を次のように説明した。「圧政が茶番であることを見抜こうとしたブアジジさんらは、ありふれた単純労働者以上の存在となった。彼の短い生涯と苦しみに満ちた死は、平凡な男のためのファンファーレとなった」

 ブアジジさんの母親は、息子には焼身自殺の意図はなかったと同紙に語った。当局が無免許で営業するブアジジさんの露店からはかりを押収したことに抗議する意図しかなかったのだという。母親は、「女性係官に果物を押収された上にほおを叩かれた。息子のプライドはひどく傷つけられた」とも話した。

 同紙は、意図がどうであれ、「彼の死は抑圧された民衆を鼓舞した。警官、秘密警察、知事、そして終身大統領にさえも盾付くことができると民衆に無言で語りかけた」と結んでいる。(c)AFP