【1月3日 AFP】オーストラリア・シドニー(Sydney)北部にある「オーストラリア爬虫(はちゅう)類公園(Australian Reptile Park)」で、ワニの飼育員たちが芝刈り作業中に、体重500キロもある巨大ワニに芝刈り機を強奪されるという恐怖の体験をした。

 事件があったのは昨年12月28日。50歳になる体長5メートルのイリエワニ、エルビス(Elvis)の囲い内で、ビリー・コレット(Billy Collett)さんらが芝刈りを始めたところ、これがエルビスの気に障ったようだ。

「あっという間の出来事で、とても恐ろしかった」と、コレットさんは記者団に語る。「ちょうど芝刈りを始めた、その瞬間だった。1メートル半ほど離れたプールの中にいたワニが、いきなり芝刈り機の端に飛びついて、思いっきり引っ張ったんだ。ぼくも一緒にプールに引きずり込まれるところだった。心臓が飛び出しそうになったよ」

 同公園に来る前、エルビスは豪北部のダーウィン(Darwin)で野生のなかで暮らしていたが、釣り船を襲撃するようになり別の爬虫類飼育施設に保護された。だが、そこでも雌のワニ数匹を殺したため、この公園に移された。

 そんなエルビスに、コレットさんが芝刈り機を譲り渡したことは正しい判断だったと、シドニー爬虫類公園の運営責任者、ティム・フォークナー(Tim Faulkner)さんは語る。フォークナーさんによれば、ワニが芝刈り機を嫌うことは、よく知られた話だという。「普通は逃げることができるし、人間とワニとの間に芝刈り機があるので、そう危険ではない。でも今回に限っていえば、ワニが素早かった。500キロのワニと引っ張り合いをしても、勝ちめはないでしょう」

 縄張り意識が強いエルビスは、強奪した芝刈り機を自分の領域であるプールの底まで引きずり込み、そのまま抱え込んだ。飼育員がカンガルーの生肉でエルビスの気を引き、ようやく芝刈り機を手放したという。

「餌でなんとかエルビスをおびき出し、エルビスが餌に飛びついた時、私はプールに飛び込んだ。そして芝刈り機をつかんで急いで逃げた」とフォークナーさん。「プールの底で、芝刈り機がエルビスのおもちゃになるのはごめんだったからね」

 この騒動でエルビスは大きな歯を2本失い、動物園側は芝刈り機1台を壊された。

 だがフォークナーさんたちは、それでも気むずかしいエルビスのことが好きだという。「あいつが大好きだよ。ちょっと短気だけどね」(c)AFP