【12月16日 AFP】同性婚が認められていないフランスで14日、女性への性転換を法的に認めてほしいと訴えていた既婚男性に対し、裁判所は婚姻状態の継続は認めるが、性転換を法的に認めることはできないとの判断を下した。

 仏西部ブルターニュ地方ブレスト(Brest)の裁判所に訴えを起こしていたのは、公務員の元男性、クロエ・アヴリロン(Chloe Avrillon)さん(41)。公的書類上の表記は現在もウィルフリド(Wilfrid)という男性名のままだ。フランスでは未婚者の性転換を法的に認めた例は過去にあるが、今回、問題となったのはアヴリロンさんが結婚していた点だ。

■妻は同性婚を希望、しかし・・・

 アブリロンさんとの間に学齢期の息子3人を持つ妻のマリー(Marie)さんは、女性となったアブリロンさんとレズビアンとして婚姻状態を継続したいと希望している。しかし、フランスでは同性婚は禁止されているため、同性婚状態を生じてしまうアブリロンさんの性転換を法的に認めることはできないというのが裁判所の判断だ。

 判決文で裁判所は、「結婚とは男性と女性との間の結合である。当裁判所は、既婚者の性を法的に修正することで、法律が禁じている婚姻状況を作り出すことはできない。既婚者の出生証明書上の性を修正することは、同性婚の状況を作ることになる」と判断理由を説明した。

 アブリロンさんは憲法判断を求めて控訴する構えだ。アブリロンさんの弁護士は「離婚していれば、性転換は認められていたはずだ。離婚しないなら転換前の性のままでいろという、脅迫のような判決だ」と怒りを表した。

 アブリロンさんとマリーさんは結婚して15年になるが、もしも2人が結婚していなければ、女性同士として、性別に関係なくカップルとしての法的保護や税的保護を受けられるフランスの「連帯市民協約」を結ぶことができる。しかし、同性愛者の権利を訴える運動家たちの長年の活動にもかかわらず、同性間の「結婚」はいまだフランスでは認められていない。

■男性名での日常生活「煩わしい」

 アブリロンさん10月、仏大衆紙パリジャン(Le Parisien)に、次のように語っている。

「女性としてのアイデンティティーが認められれば、自分が自分らしくあれる。それだけではなく、日常生活でも煩わされることがずいぶん減ります。小切手にサインしたり、荷物を受け取る際に(男性名を書き込むと)時々、拒否されることがある。税金の控除にしても結婚していたほうがずっといい。(妻の)マリーはずっとレズビアンです。わたしと恋に落ちた時は、その相手がたまたま女性らしい少年だった、つまりわたしだったというだけなのです」

 フランスの野党・社会党は、来年6月の議会選で勝利した暁には同性婚および同性婚カップルの養子縁組を認めると公約しているが、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領率いる現与党・国民運動連合(UMP)内では、同性婚をめぐる見解は割れている。

 欧州連合(EU)では加盟国中10か国が、法的に同性婚を認めている。(c)AFP