【11月14日 AFP】国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産(World Heritage)に登録された仏南西部サンテミリオン(Saint Emilion)の市長が、市の赤字返済のために同市の中世建築を売り払ったことを聞いたとき、住民は衝撃を受けた。

 市議会もこの売却を、歴史地区の保存のために必要な資金を調達する手段として支持したものの、今後の資金調達については戦略を再検討し、別の方策を考案することを約束した。

 売却されたのは、スパークリングワイン製造元が使っていた14世紀のコルドリエ修道院(Cordeliers cloister)。売却について、国有建造物の設計家でボルドー(Bordeaux)とサンテミリオンを管轄するフランソワ・ゴンドラン(Francois Gondran)氏は、「サンテミリオンには貴重な中世建築があるが、多くの作業が必要で、市にはそれをまかなう資金がない」と説明した。

「費用がかかるのは城壁の維持。城壁の80%は中世に建築されている。修復にとても費用がかかり、アクセスも困難で多くの工数がかかる」

■ブドウ園の景観、巡礼路の町 サンテミリオン

 ボルドーから40分の距離にあるワインで有名な中世の町、サンテミリオンは、ブドウ園の景観が評価され、1999年にユネスコ世界遺産に登録された。

 ローマ人が初めてブドウの木を持ち込んだのが紀元前27年。8世紀にはブルトン人修道士が裕福な修道会を説得し、この地に教会や修道院、地下墓地、女子修道院が建設された。

 11世紀までには、サンテミリオンはサンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)への巡礼路として、多くの人が行き交う場所になっていた。

 現在では、ワイン愛好家や歴史ファン、巡礼者たちが、サンテミリオンの丸石の舗道を通り抜け、石灰岩の教会やワインショップをめぐる。

 コルドリエ修道院は、人混みを逃れた観光客たちがほっと一息つくことのできる場所だった。(c)AFP/Suzanne Mustacich